EU加盟国は8日開いた大使級会合で、域内の企業が有価証券を発行する際に投資家に提示する目論見書に関する新たな規則案を承認した。目論見書を交付する際の要件の緩和や手続きの簡素化を柱とする内容で、中小企業などが資金調達しやすい環境を整えるのが狙い。規則案は今月17日の閣僚理事会で正式に承認される見通しで、その後は規制緩和の早期実現に向け、EU議長国オランダが欧州議会との交渉にあたる。
EUでは2005年に発効した「目論見書指令」に基づき、EU内の企業が域内で株式、社債を発行する際、投資家に提示する目論見書の運用ルールが定められている。これによって、ある加盟国の当局から承認された目論見書はEU全域で有効となり、企業は国境を超えた資金調達がしやすくなる。
新たな規則案は、EU域内におけるビジネス環境の改善を目的とする「欧州投資計画」の一環として、欧州委員会が昨年11月に提案した。目論見書作成のコストや手間の削減に主眼を置いた内容で、具体的には株式・社債の発行規模が10万ユーロ以下の場合は目論見書を不要とするルールを改正し、上限を50万ユーロに引き上げる。また、国内での資金調達を対象に、加盟国が独自の判断で設定できる上限も500万ユーロから1,000万ユーロに引き上げる。
規則案にはこのほか◇頻繁に株式や社債を発行する企業は「ユニバーサル・レジストレーション・ドキュメント(URD)」と呼ばれる企業情報開示文書の定期的な更新を条件に、申請から5日以内に新たな発行が認可されるようにする◇現在は時価総額が100万ユーロを下回る企業に対し、通常より簡略的な目論見書の交付を認めているが、これを同2億ユーロまでの企業に対象を拡大する――などが盛り込まれている。