映画放映権めぐる調査、欧州委が改善受け入れ

欧州委員会は7月26日、英有料テレビ大手スカイUKと米大手映画会社が結んでいる放映権契約がEU競争法に抵触する恐れがあるとして、合わせて7社に異議告知書を送付していた問題で、米パラマウント・ピクチャーズが提示した改善策を受け入れたと発表した。利害関係者から寄せられた意見などをもとに市場分析を行った結果、パラマウントが打ち出した一連の措置によって同社とスカイとの競争制限的協定が解消されると判断した。欧州委はパラマウントに対する調査を打ち切り、今後5年間にわたり、法的拘束力のある確約として改善策の実施を義務づける。一方、スカイを含めた残り6社に対する調査は継続する。

問題となっていたのは、スカイと映画会社の契約に盛り込まれた国境を越えたサービス提供を制限する条項。米国の有力映画会社は通常、1カ国(あるいは1つの言語圏)につき1社の有料テレビ事業者と独占的契約を結んでいるため、映画の放映権は各事業者が拠点を置く国に限定され、国境を越えて放映することができない。欧州委はこうした「地理的制限(ジオブロッキング)」がEU法で禁止された競争制限的協定にあたる可能性があるとして、2014年1月に欧州の有料テレビ事業者と米映画会社が結んでいる放映権契約について調査を開始。昨年7月にパラマウントなど米映画大手6社とスカイに対し、異議告知書を送付した。

地域を限定した放映権契約が必ずしも競争法に違反するわけではないが、スカイと米6社の契約には英国とアイルランド以外からはスカイのサービスにアクセスできないようにする取り決めが含まれており、域内の消費者からの「自発的要求(unsolicited requests)」を受けた「受動的販売(passive sales)」まで制限する内容になっている。欧州委はこうした取り決めが消費者の選択肢を狭め、有料テレビ事業者間の国境を越えた競争を阻害しているとの見解をまとめ、各社に放映権契約の見直しを求めていた。

欧州委によると、パラマウントはスカイとの契約に盛り込まれた地理的制限条項を緩和し、英国とアイルランド以外の欧州経済領域(EEA)の消費者もスカイ経由でパラマウントの映画やその他のコンテンツを視聴できるようにする。また、英国とアイルランドの消費者から要求があった場合、英国以外に拠点を置くEEA内の放送事業者がパラマウント映画を提供できるようにする。

なお、パラマウント以外ではウォルト・ディズニー、NBCユニバーサル、ソニー、21世紀フォックス、ワーナー・ブラザーズが異議告知書を受け取っており、欧州委はこれら5社とスカイに対する調査を継続する方針を示している。

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