欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/4/7

西欧

独政府、最低賃金法案を閣議決定

この記事の要約

ドイツの最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)が2日、閣議決定された。同法案は今後、連邦議会(下院)と州の代表で構成される連邦参議院(上院)で可決され、来年1月1日付で施行される予定だ。 ドイツには全国・全業界 […]

ドイツの最低賃金法案(労使協定の自律の強化に向けた法案)が2日、閣議決定された。同法案は今後、連邦議会(下院)と州の代表で構成される連邦参議院(上院)で可決され、来年1月1日付で施行される予定だ。

ドイツには全国・全業界一律の最低賃金が存在しない。労使が政治の介入を排して労働条件を自主的に定める制度、「労使協定の自律」が深く根づいているためで、法定賃金はこの制度に抵触するとみなされてきた。

しかし、経済競争力の強化に向けて2000年代の前半に行われた構造改革(アジェンダ2010)の副作用として低賃金セクターで働く被用者が増えたことで状況が変化した。構造改革は熟練技能を持たない長期失業者が労働市場に足がかりを得るという点では一定の効果があったものの、フルタイムで働いても生活に必要な収入を稼げない就労者が発生するという問題も生み出したためだ。

与党はこうした事態を受け、昨年11月の政権協定に全国・全業界一律の最低賃金導入を盛り込み、金額を8.5ユーロ(時給)とすることを取り決めた。

最低賃金は来年1月から導入される。ただ、労使協定で独自の最低賃金を取り決めた業界では16年末まで8.5ユーロ未満の賃金が認められる。このため、全業界を拘束する最低賃金が導入されるのは17年1月からとなる。

18年以降の最低賃金額は、労使の代表で構成される「最低賃金委員会」が専門家の助言を受けて決定する。

EUでは加盟28カ国のうち21カ国で全産業を拘束する最低賃金が法律で定められている。こうした制度がないのはドイツ、オーストリア、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、イタリア、キプロスの7カ国に限られている。