シェンゲン5カ国の国境審査、欧州委が3カ月延長を提案

欧州委員会は25日、難民危機に対応するためシェンゲン協定参加国の一部が一時的に復活させている国境審査について、来年2月中旬まで3カ月の延長を認めるようEU加盟国に提案した。EUは年末までに事態を収束させ、移動の自由を定めた同協定の運用を正常化させることを目指していたが、ギリシャなどの現状を踏まえて引き続き難民らの流入抑制策が必要と判断した。近く閣僚理事会を開いて欧州委の提案について協議する。

EU加盟国の大半が参加するシェンゲン協定の圏内では、中東などから押し寄せる難民や移民の流入に歯止めをかけるための緊急措置として、昨秋以降、ドイツ、オーストリア、デンマーク、スウェーデンと、非EU加盟国のノルウェーが相次いで国境審査を復活させた。同協定の第26条は、治安などに深刻な脅威がある「例外的な状況」に限り、加盟国が原則6カ月の期限付きで国境審査を再導入し、改善がみられなければ最長2年にわたって同措置を継続することを認めている。EUは5月、同条項に基づき、5カ国が国境審査を6カ月延長することを承認。シェンゲン圏内における国境審査の延長を認めるルールが初めて適用された。現在の延長措置は11月に12日に期限を迎えるため、欧州委が3カ月の再延長を提案した。

欧州委のティメルマンス第1副委員長は声明で「EUと関係国は一刻も早いシェンゲン協定の機能正常化に向けて取り組みを進めており、この間に大きな進展があった。ただ、依然として多くの不法移民がギリシャなどに留まっており、再び混乱が大きくなるのを防ぐために引き続き国境管理が必要と判断した」と説明。アヴラモプロス委員(移民・内務・市民権担当)はそのうえで、来年1月にはEU主導で域外との国境警備にあたる「欧州国境沿岸警備隊」が本格稼働する見込みであることから、新たに提案した3カ月の延長措置が期限を迎えるまでにシェンゲン協定の運用が正常化され、国境審査が廃止されるとの見通しを示した。

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