英国の高等法院(高等裁判所)は3日、政府はEUへの離脱通告に際して、議会の承認を得なければならないとする判決を下した。メイ首相は政府の独断で通告し、離脱交渉に入ることができると主張していた。政府は判決を不服として上訴するが、最高裁で訴えが認められなければ議会承認が必要となり、離脱交渉開始がずれ込む可能性が出てきた。
メイ首相はEUへの離脱通告に関して、議会の承認を取り付けることなく、政府が委任されている「国王大権」を行使する形で決定する方針を打ち出し、来年3月末までに通告する意向を表明している。これに対して、6月の国民投票でEU残留派だった市民の一部が、議会承認が必要になるとして提訴していた。
政府側は同訴訟で、EU離脱は民意で決まったもので、政府に離脱通告を行う権限があると主張した。しかし、高等法院は原告側を支持し、議会の承認が求められるとの判断を下した。
政府は上訴を決めており、最高裁は12月5日に審理を開始する予定。同月中に判決が下る見込みだ。これで政府が敗訴すれば、議会での承認に向けた手続きに入らざるを得なくなる。
英議会はEU残留支持派が多数を占めているが、現地での報道によると、離脱そのものを阻止する可能性は薄いもよう。ただ、EU単一市場へのアクセス維持を犠牲にしてでも移民制限に踏み切る“ハード・ブレグジット(強硬離脱)”も辞さない構えを示している政府に対して、離脱通告承認の条件として、EUとの離脱交渉で移民制限問題について妥協することを約束させるとの見方が出ている。このため、離脱をめぐって政局が混迷する事態が予想される。一方、3日の外国為替市場では、ハード・ブレグジットが回避されるとの期待から、下落していたポンドが上昇に転じた。