欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/9

EUその他

ブルガリアに「サウスストリーム」計画凍結を要請、ウクライナ情勢が背景に

この記事の要約

欧州委員会は3日、ブルガリア政府に対して、ロシアからウクライナを迂回して欧州諸国に天然ガスを輸送する新たなパイプライン「サウスストリーム」の建設計画を一時凍結するよう要請したことを明らかにした。ロシアの国営ガス会社ガスプ […]

欧州委員会は3日、ブルガリア政府に対して、ロシアからウクライナを迂回して欧州諸国に天然ガスを輸送する新たなパイプライン「サウスストリーム」の建設計画を一時凍結するよう要請したことを明らかにした。ロシアの国営ガス会社ガスプロムが主導する同プロジェクトは、エネルギーの生産・供給事業と輸送事業の分離を定めたEUルールに違反する可能性があるというのが理由。欧州委はプロジェクトに関する詳細情報の提供を求めており、1カ月以内にブルガリア政府から十分な回答が得られない場合、法的手続きに入る可能性がある。

サウスストリームはロシア南西部からウクライナを迂回して黒海海底を通り、ブルガリアを経由してイタリアやオーストリアに至るガスパイプライン。運営会社にはガスプロムが50%、残り半分をイタリアと独仏の資源エネルギー企業が共同で出資している。ロシアと欧州側の関係国は2009年にパイプライン建設の合意書に署名しており、ブルガリアでは事業者の選定や認可手続きも終わり、6月中の着工が見込まれていた。

ウクライナ情勢を受け、EUではエネルギー分野における脱ロシア依存に向けた動きが本格化しているが、欧州議会は4月半ば、ロシアによるクリミア編入に抗議して、サウスストリーム計画の撤回を求める決議を採択した。しかし、欧州委はロシア側との決定的な対立を避けるため、エネルギー市場の自由化を目的とする「第3次エネルギーパッケージ」の柱の1つで、電力・ガス生産を手掛ける大手企業による輸送網の保有・運営を厳しく制限した規定との整合性を理由に、入札プロセスを含めたプロジェクトの妥当性を検証する道を選んだ。

欧州委のコロンバーニ報道官は「ブルガリアに正式通知書を送り、サウスストリーム計画に関する情報提供を求めると共に、EUルールとの整合性について結論が出るまでプロジェクトを一時凍結するよう要請した」と述べた。

一方、ブルガリアのストイネフ経済・エネルギー相は、今月16日にEUが派遣する専門家との協議が予定されていることを明らかにしたうえで、「(ブルガリアは)ウクライナ紛争の人質にとられている」と発言。他のEU諸国には引き続きロシアから天然ガスが供給される一方で、自国が紛争の巻き添えで不利益を被る状況を容認することはできないと述べ、EUの対応に不快感を示した。