欧州議会は14日の本会議で、大企業や上場企業におけるコーポレート・ガバナンス(企業統治)の向上を目的とする「株主権利に関する指令」の改正案を賛成多数で可決した。株主が適切に権利を行使しやすくすることで、出資する企業の経営に積極的に関与するよう促すのが狙いで、報酬制度に関する発言権の強化などを柱とする内容。閣僚理事会の正式な承認を経て新ルールが導入される。加盟国は施行から2年以内に国内法を整備する必要がある。
株主指令の改正案は欧州委員会が2014年4月に打ち出した。背景には金融危機に対する反省がある。欧州委は、株主が経営陣による過度の短期的リスクテイクを見逃したことが事態を悪化させる一因になったと分析。株主の権利強化や短期主義の排除に主眼を置いた改正案をまとめた。これを受けた欧州議会の審議では、企業の税負担に関する透明性を高めるための施策や、株式の長期保有を奨励するための優遇制度などを盛り込んだ修正案が提示された。株主が長期的な視点で企業経営に関与することを促す改正案に対しては、産業界の反発が根強く、調整は難航したが、昨年12月に欧州議会、EU加盟国、欧州委の間で合意が形成された。
改正案によると、上場企業は役員報酬に関する方針を策定して株主に賛否を問わなければならない。報酬方針には給与や賞与などの明確な基準や上限を明記するほか、報酬が企業の長期的な業績にどのように貢献するかなどの情報を盛り込む必要がある。また、経営者に対して株主との対話を促すと共に、株主総会への参加や投票といった株主の権利行使を促進するため、証券会社などと協力して迅速に株主の氏名や連絡先などを確認できる仕組みを整備するよう求めている。さらに、株主に損害を与える可能性のある取引について情報開示を義務付けるほか、株主と企業利益を保護する保証手続きの導入を求めている。
改正案にはこのほか◇機関投資家などの株主から手数料を受け取って、株主総会の議案に賛成すべきか反対すべきか助言する議決権行使助言会社(プロクシアドバイザー)に対し、主な情報源や方法論など、助言の根拠となる情報の開示を義務付ける◇上場企業の主要株主である年金基金や保険会社などの機関投資家に対し、投資先企業との関わり方や投資戦略の公開を義務付ける――などが盛り込まれている。