自動車大手ダイムラーや保険大手アリアンツなどドイツの7社は8日、インターネットを利用した官民の幅広いサービスを一つの認証マスターキーで利用できるようにするためのプラットフォームの立ち上げで基本合意したと発表した。同様のサービスで先行するグーグル、フェイスブック、アップルといった米IT大手に依存しない欧州独自の統一認証システムを構築する。個人情報の保護を重視することで、米国勢に対抗する考えだ。
ネットを通じたサービスを利用するためには通常、それぞれサイトでユーザー名とパスワードを入力しなければならず、手間がかかる。アマゾンで商品を購入する場合と、ドイツ鉄道(DB)でチケットを購入する際はそれぞれのパスワードなどを入力しなければならないといった具合だ。
これに対して、グーグルなどではスマートフォンにアプリを入力すれば、そうした煩わしい手続きなしに様々なネットサービスを利用できる。ただ、アクセス情報はグーグルなどに筒抜けとなり、個人情報保護の面で難点がある。
ダイムラーなどが設立するコンソーシアムでは認証手続きの煩わしさを大幅に軽減するとともに、欧州連合(EU)のデータ保護規制に準拠することで情報の自己決定権を尊重したシステムを導入する。このため、将来的には電子行政サービスの利用や契約締結も同システムを通して行うことができるようになる。認証に例えばパスワードを用いるのか、それとも指紋を用いるのかなど技術的な詳細は未定。
コンソーシアムに参加するのはダイムラー、アリアンツ、ドイツ銀行と同行子会社のポストバンク、メディア大手アクセル・シュプリンガー、ITサービスのコア、ダイムラーが出資する地図サービスのヒア。このほか、プラットフォームのセキュリティ分野で、フラウンホーファー・オープン・コミュニケーションシステム研究所(FOKUS)の協力を受ける。コンソーシアム参加企業を増やしていく考えで、電気通信大手のドイツテレコムとは現在、加盟交渉を行っている。
今後は年内に有限会社を設立し、来年下半期までにプラットフォームの運営を開始する予定だ。