欧州委がEUの財政見直しに着手、英離脱による「予算の穴」に対応

EUが英国の離脱に伴い、財政の見直しを迫られている。英の拠出がなくなることでEU予算に大きな穴が開くためだ。欧州委員会は6月28日、将来の財政のあり方を協議するためのたたき台となる文書を発表し、対応に着手した。

EU予算は各国の国民総所得(GNI)に応じた拠出や関税収入などによって賄われている。英の年間拠出額は予算全体の十数パーセントに相当する100~120億ユーロ程度。同国が2019年に離脱すると、財源が大きく不足する。

欧州委は3月に公表したEUの将来像に関する白書で、(1)現状維持(2)通貨統合など単一市場に絞って統合を深化させる(3)先行統合の推進(4)分野を絞り込んで効率的に統合を進める(5)あらゆる分野で加盟国の結束を強める――という5つの選択肢を示していた。今回の文書でも、これに沿って予算の大幅な削減から増額まで5つの選択肢を提示したが、欧州委は移民、テロ対策、安全保障などの分野でEUが大きな役割を担う上で資金が必要になるとして、予算縮小は避けたい考えをにじませた。

欧州委のエッティンガー委員(予算担当)は、EUが財政を引き締める必要があるとしながらも、これまでのような関連機関の人件費削減などリストラでは限界があると指摘。農業、開発が遅れている地域の振興に向けた補助金の各国負担を増やし、EU予算を節減する案などを示した。法治がEU基準を満たしていない国への補助金を削減する可能性にまで踏み込んだ。名指しは避けたものの、司法の独立、報道の自由、人権問題などで批判を強めているポーランドをけん制した格好となる。

一方、新たな財源の確保に関しては、EU共通の金融取引税、環境税の導入などを選択肢に挙げた。欧州委は2018年に詳細な案を提示する予定だ。

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