EUの欧州委員会は4日、イタリア政府による国内3位銀行バンカ・モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(BMPS)の救済を正式承認したと発表した。政府は同行に54億ユーロの公的資金を注入して70%を出資し、国有化する。
BMPSは巨額の不良債権が経営を圧迫しており、欧州中央銀行(ECB)がEU内の主要銀行を対象に実施した2016年のストレステスト(健全性審査)で資本不足と判定された。これを受けて乗り出した大型増資が昨年12月に失敗に終わり、自力再建を断念。政府が公的資金の注入を柱とする救済を決め、欧州委に承認を求めていた。
伊政府と欧州委は6月初めに同行救済について基本合意した。条件となっていた向こう5年間の再建計画が固まったことを受けて、正式承認に至った。BMPSは同計画に基づいて、不良債権の受け皿機関(バッドバンク)に261億ユーロ相当の不良債権を移管する。同機関には民間の銀行救済基金「アトランテ・ファンド」が一部を出資する。さらに同行は幹部の報酬削減、人員整理などの合理化を実施。事業を消費者、中小企業向けの銀行業務に集約することを求められる。パドアン財務相によると、不良債権処理は来年上期に完了する見込みだ。
政府によると、BMPSの資本不足は81億ユーロ。公的資金注入をできる限り抑えるため、43億ユーロは劣後債の証券化によって、機関投資家が株主となって損失を負担する形でカバーする。ただし、リスクを知らされず劣後債を購入した個人投資家は保障を受ける。注入する公的資金のうち15億ユーロが同保障に充てられる。
パドアン財務相は記者会見で、政府はBMPSの再建によって公的資金を回収できるだけでなく、利益を生むことも可能と指摘。BMPSは2021年の完済、民営化を見込んでいるが、前倒しの可能性もあるとしている。