欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/23

西欧

GEがアルストムのエネ部門買収へ、仏政府が提案支持を表明

この記事の要約

フランス政府は20日、仏重電大手アルストムのエネルギー部門をめぐる米ゼネラル・エレクトリック(GE)と三菱重工業・独シーメンス連合の争奪戦で、GEの買収案を支持する意向を表明した。政府がアルストムに20%を出資し、筆頭株 […]

フランス政府は20日、仏重電大手アルストムのエネルギー部門をめぐる米ゼネラル・エレクトリック(GE)と三菱重工業・独シーメンス連合の争奪戦で、GEの買収案を支持する意向を表明した。政府がアルストムに20%を出資し、筆頭株主となることが条件となる。これを受けて、アルストムの取締役会は21日、GEの提案を受け入れると発表した。

GEは4月末、アルストムの発電用タービン、送配電機器などエネルギー部門を123億5,000万ユーロで買収することを提案し、アルストム取締役会の支持を取り付けた。しかし、仏政府がエネルギー安全保障の観点から難色を示し、さらにシーメンスと三菱重工の連合が対抗案を出したことから、19日に新たな案を提示していた。

当初の案では、エネルギー部門をまとめて買収することになっていた。新提案では、買収するのはガスタービン部門だけで、原子力・蒸気タービン、送配電、再生可能エネルギーの3部門は、それぞれ折半出資の合弁会社に移管する。また、GEの鉄道信号事業をアルストムに売却する。原子力事業に関して、技術など重要問題について仏政府に拒否権を与えることも決めた。

仏政府は同案を評価し、政府が仏コングロマリット(複合企業)のブイグが保有するアルストム株式29%のうち20%を取得し、筆頭株主となることを条件に、同提案に沿った取引を認める方針を打ち出した。GEはエネルギー分野での外資による買収の許認可権を持つ政府の支持を取り付けたことで、同提案に沿った買収、合弁会社設立が実現する見通しとなった。

ライバルであるGEによる買収を阻止したいシーメンスと三菱重工が16日に発表した対抗案は◇シーメンスが39億ユーロでガスタービン事業を買収◇三菱重工が蒸気・原子力タービン、送配電、水力発電の3事業に出資し、3つの合弁会社を設立し、31億ユーロを投資する――という内容。アルストムのエネルギー部門を142億ユーロと評価した形で、同額はGEの当初の提案を上回る。GEが19日に新たな案を提示したことを受けて、20日に買収額引き上げを含む新提案を示したが、仏政府の支持を取り付けることはできなかった。モントブール経済相は、三菱重工・シーメンス連合の案では、EUの競争法に抵触する恐れがあることが大きな判断材料となったことを明らかにした。

三菱重工とシーメンスは仏政府の決定を尊重し、巻き返しに向けた再提案を行わない甲を示しており、GEによる買収が確実な情勢となってきた。