EU離脱の第2回交渉会合、清算金問題など平行線

EUと英国は20日、英国のEU離脱に向けた第2回交渉会合を終えた。離脱に伴い英国が支払う「清算金」など主要な離脱条件について協議したが、双方の主張を確認するにとどまった。EUと英国は10月のEU首脳会議までに離脱条件についての協議を完了し、「十分な進展」があったと加盟国が判断した場合に、通商分野など将来に向けた交渉に入る方針で一致しているが、「第1段階」の交渉の入り口で立場の違いが浮き彫りになった格好だ。

EUと英国は6月に第1回交渉会合を開き、交渉の第1段階では◇英国に居住するEU市民、他のEU加盟国で暮らす英国民の権利保護◇英国が拠出を約束したEU長期予算の分担金など最大1,000億ユーロに上るとされる清算金の支払い◇英国の北アイルランドと国境を接する加盟国アイルランドとの国境管理問題◇その他の法的問題――の4分野を優先的に協議することで一致した。今回の会合はこれらの課題について話し合う初めての実質協議の場となった。

EUのバルニエ首席交渉官は会合終了後の会見で、「今回の協議で双方の立場が一致している点と、そうでない点を確認することができた」と説明。英国が支払う清算金について、EU側は早期に金額を確定したい考えだが、英国からはEUが求めていた対案の提示がなかったとして「英国は自らの姿勢を明確にする必要がある」と指摘した。

この点について、英国のデービスEU離脱担当相は「英国は国際的な責任を認識している」と述べ、EU側との間で妥協点を探る姿勢を見せた。これに対し、ジョンソン外相は「EUは法外な清算金の請求を断念すべきだ」と反発し、英政府としての方針が定まっていないことをうかがわせた。

一方、英国で暮らすEU市民の権利保護をめぐっては、英側は国内に5年以上暮らしたEU市民に福祉などで英国民と同等の権利を保障する方針を示している。しかし、EU離脱後に呼び寄せた家族の扱いや入国期限日などをめぐり調整が難航している。バルニエ氏はこの問題についてもEUと英国の間に「根本的な違いがある」と述べた。

さらに英国に暮らすEU市民の権利をめぐって法的判断が必要になった場合の対応についても溝は埋まっていない。英国は国内法で規制すべきだとの立場を示しているのに対し、EU側はEU司法裁判所が管轄すべきだと主張しており、今回の会合でも議論は平行線をたどった。

離脱交渉の期限は2019年3月末。欧州議会の承認手続きなどを考慮すると18年秋までに交渉を終える必要がある。双方は通商分野を柱とする第2段階の交渉について今秋の協議開始を目指す方針で一致しているが、離脱条件をめぐる協議で足踏み状態が続けば全体の交渉スケジュールに遅れが生じる恐れがある。

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