欧州委員会は26日、ポーランドが目指す司法制度改革が政府による司法への介入を可能にし、EUの基本理念である「法の支配」に反するとして、同国政府に1カ月以内の是正を求める勧告書を送付した。ポーランド側が改善要求に従わず、最高裁判所判事の解任などに踏み切った場合、EUでの議決権停止を軸とする制裁措置を発動するための手続きに入ると警告している。
ポーランドでは2015年の総選挙で愛国主義的な色彩の強い「法と正義」が政権を掌握。違憲判決を出すのが難しくなるよう憲法裁判所の仕組みを変えたり、放送局や通信社を国営化するなど、司法の独立や報道の自由を脅かす強権的な政策を推し進めている。欧州委はこれまでも同党が主導する司法制度改革に対して強い懸念を表明し、法の支配の原則を守るよう繰り返し警告してきたが、ポーランド政府は今月に入り、政府が最高裁判事の人事権を掌握するための新たな法案を提出。これを受けて欧州委は19日、法改正の改正手続きを凍結しなければEUでの議決権停止を含む厳しい制裁を検討すると警告していた。
一連の法案は22日までに上下両院を通過したが、ドゥダ大統領は24日、首都ワルシャワを中心に政府による司法介入に反対する抗議デモが相次いだこと受け、最高裁判事の人事権などに関連する法案について拒否権を発動。欧州委はこの点を考慮し、ポーランド側に1カ月の猶予期間を与えることとした。
欧州委のティメルマンス副委員長は声明で、政権与党が主導する司法制度改革は「司法の独立に負の影響を与え、法の支配に対する脅威を増幅させる」と警告。1カ月以内に是正措置を講じるよう迫った。
議決権停止はEU基本条約第7条で定められた、自由・民主主義・人権の尊重および法の支配に対する重大な違反を行った加盟国に対する最も厳しい制裁で、これまで実際に発動されたケースはない。加盟国の5分の4以上の賛成で制裁発動のための手続きに入ることができ、実際に議決権を停止するには全会一致の承認が必要。採決が行われた場合、ポーランドと同様に強権姿勢を強めるハンガリーが制裁に反対するとみられている。