欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/30

総合 – 欧州経済ニュース

首脳会議が財政規律の柔軟運用で合意、赤字猶予の特例措置を積極活用へ

この記事の要約

EUは26、27日に開いた首脳会議で、財政規律を柔軟に運用することで合意した。財政緊縮一辺倒への強い不満が先の欧州議会選での反EU勢力の躍進を招いた一因になったという反省を踏まえたもので、赤字是正を特例的に猶予する規定を […]

EUは26、27日に開いた首脳会議で、財政規律を柔軟に運用することで合意した。財政緊縮一辺倒への強い不満が先の欧州議会選での反EU勢力の躍進を招いた一因になったという反省を踏まえたもので、赤字是正を特例的に猶予する規定をフル活用し、赤字国が成長、雇用も重視しながら財政再建を進めることができる環境を整える。

EUは財政規律を定めた安定成長協定に基づき、加盟国に財政均衡を義務付けており、違反した国は厳しい財政緊縮策の導入を求められる。しかし、これに関しては景気底上げに向けた財政出動が限られるため、成長、雇用を圧迫し、逆に財政健全化を難しくするという弊害も指摘され、重債務国がルール改正を求める動きをみせていた。

今回の首脳会議では、欧州議会選の結果を受けて、厳しい財政緊縮を迫られているイタリア、フランスが安定成長協定の見直しを求めるとの観測が浮上していた。しかし、財政規律重視派のドイツが説得に回り、現行ルールには手を付けない代わりに規則を柔軟運用することで合意。過剰な財政赤字を抱える国が構造改革に取り組む場合に、赤字是正期限の延長を認めるといった特例措置を積極的に活用する方向で一致した。

これを受けて、採択された総括文書にも◇EUの既存の枠組みが、財政規律と成長支援の必要性のバランスをとるために提供している可能性を活用するべき◇財政安定化は、成長にフレンドリーな形で、差別化された方法で継続する◇成長を高め、財政を持続的に改善するための構造改革を重視し、既存の安定成長協定のルールに盛り込まれた柔軟的措置を最大限に活用する――という文言が盛り込まれた。

この柔軟的措置活用の具体案に関しては、欧州委員会が12月14日までに、たたき台となる報告書をまとめることになっている。