EU23カ国が常設軍事協力の枠組みで署名、12月の首脳会議で始動へ

EUは13日開いた外相・防衛相理事会で、常設の軍事協力の枠組み(PESCO)について協議し、創設に参加する23カ国が共同文書に署名した。次回の閣僚理事会で正式決定し、12月のEU首脳会議で始動させる。有志国で軍事技術の共同開発などを進め、防衛協力の深化を図る。

PESCOは防衛面の連携に積極的な有志国による協力拡大を進めやすくするため、2009年に発効したEU基本条約(リスボン条約)に盛り込まれたが、EU28カ国のうち22カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)と役割が重複するとして、英国が創設に反対したことで議論が停滞していた。しかし、英国のEU離脱決定やウクライナ情勢を巡るロシアとの関係悪化、欧州の防衛に消極的な米トランプ政権の誕生など、欧州の安全保障をめぐる情勢が不透明さを増すなか、ドイツとフランスの主導で急速に議論が加速。6月のEU首脳会議でPESCO創設を目指す方針を決め、欧州委員会を中心に具体策を検討していた。

PESCOへの参加を表明する文書には、EU加盟28カ国のうち英国、デンマーク、アイルランド、ポルトガル、マルタを除く23カ国が署名した。創設に加わらない国も後から参加できるようにするほか、英国のEU離脱を念頭に、域外からも参加可能とする。各国は装備の共同調達や開発、テロなどの緊急時に活動する部隊への参加、後方支援業務の共有化、軍事訓練などでの貢献で合意。EU予算や加盟国の拠出金で新たに創設する「欧州防衛基金」を念頭に、防衛予算の拡大も確約した。

EUのモゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(外相)は記者会見で「欧州防衛の新たな1ページだ」と意義を強調した。ただ、フランスが海外の紛争地などへの派兵を含む協力体制の構築を主張する一方、ドイツは加盟国による緩やかでより広範な協力を目指しており、一部ではPESCOの実効性を疑問視する声も上がっている。

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