EUは3日、より安全で安定的な金融システムの構築を目的とした新たな金融規制「第2次金融商品市場指令(MiFIDⅡ)」を施行した。これまで規制の枠外にあった債権などの投資商品や私的プラットフォーム上での取引を幅広く規制することや、専用のプログラムを用いて自動的に発注を繰り返す高頻度取引(HFT)の監視強化などを柱とする内容。市場の透明性向上と投資家保護の強化を図り、金融危機の再来を防ぐ。
EUでは2007年に現行指令の「MiFID」が施行され、資本市場および投資サービスのための包括的な枠組みとして機能してきた。しかし、規制対象が限定されているため市場の透明性が十分に確保されず、これが金融危機を招く一因になったと考えられるようになった。そこで欧州委員会は金融規制改革の一環としてMiFIDの見直しに着手し、11年に金融市場の構造変化への対応や、市場の透明性確保などに主眼を置いた現行指令の改正案(MiFIDⅡ)を発表。欧州議会と閣僚理事会の承認を経て14年4月に新指令が成立した。17年1月の新ルール導入を目指していたが、ITシステムの整備など技術面の準備に手間取り、施行が当初の予定から1年ずれ込んだ。
MiFIDⅡでは新たに債権やデリバティブ(金融派生商品)などが規制の対象となり、金融機関や取引所などは詳細な取引情報の開示が義務付けられる。資産運用会社は金融機関に支払う売買手数料と、証券会社が作成するアナリストリポートなどの調査費用を分けて投資家に開示しなければならない。
相場を乱高下させるリスクの高い高頻度取引に関しては、新たに「アルゴリズム取引」と呼ばれるカテゴリーを設けてコンピュータによる自動取引を規制する。ヘッジファンドなど1千分の1秒単位で自動発注をくり返すトレーダーは、自動取引のプログラムに用いられているアルゴリズムの検査を受け、監督当局から承認を得なければならない。
さらに投機筋による農産物やエネルギー資源などの価格つり上げを防ぐため、コモディティ市場でトレーダーが一定の時間内に持てるポジション(建玉)に上限が設けられる。