欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/6/30

東欧・ロシア・その他

ブルガリア4位銀行が政府管理下に、緊急支援の可能性も

この記事の要約

ブルガリア政府は23日、取り付け騒ぎによる資産減少で経営危機に陥っているコーポレート・コマーシャル・バンク(KTB)に対し、緊急支援を実施する用意があることを明らかにした。まずは同行の資金需要を確認したうえで、主要株主に […]

ブルガリア政府は23日、取り付け騒ぎによる資産減少で経営危機に陥っているコーポレート・コマーシャル・バンク(KTB)に対し、緊急支援を実施する用意があることを明らかにした。まずは同行の資金需要を確認したうえで、主要株主に追加投資を要請する方針だ。

KTBでは20日、大口債務の回収が難しくなるとの懸念から取り付け騒ぎが発生した。小口預金者が銀行に殺到して預金の20%を引き出し、同行を流動資金不足に追い込んだため、同行は取引を停止。中銀はこれを受けて3カ月間の時限措置として同行を管理下に置いた。

中銀は10日かけて財務状況を吟味した上で、7月21日までに主要株主との合意を目指したい考え。株主との話し合いが決裂した場合は、政府が公的資金を注入し国有化する可能性もあるとしている。KTBおよび子会社クレディ・アグリコール・ブルガリアの支店は、それまで営業を中止する。

取り付け騒ぎが起こった背景には、KTBの筆頭株主であるツヴェタン・ヴァシレフ頭取とその長年のパートナーだったデルヤン・ペーフスキ議員(権利と自由のための運動:DPS)の対立があるようだ。

KTBは、政府系機関から多額の融資を引き出し、その資金を高金利で貸し付けて急速な事業拡大を遂げたとみられている。また、ペーフスキ議員とその母親が保有するメディア大手ニュー・ブルガリア・メディア・グループに融資し、その成長を支えたとされる。

ただ、両者の対立を示す報道がこのところ相次いでいるほか、◇組織犯罪への関与◇政府との関係を通じて公共調達案件を不正に落札――といった疑惑が浮上していることなどが、同行が危ないとの憶測につながったとみられる。

KTBは、ウニクレディト・ブルバンク、DSK、ファースト・インベストメント・バンクに次ぐ同国第4位の銀行。5月にはクレディ・アグリコールのブルガリア子会社の買収手続きを完了した。主要株主はヴァシレフ頭取(50%強)、オマーン国家準備基金(SGRF、30%強)、ロシアのVTBアセット・マネジメント(10%弱)となっている。

市場関係者は、KTBの経営危機が発端となってブルガリア金融業界が危機に陥る可能性は小さいとみる。ただ、同国ではガスプロムが主導する天然ガスパイプライン「サウス・ストリーム」計画をめぐるEUとの対立を機に、中道左派連立内閣が総辞職し、9月に前倒し選挙が実施されることがほぼ確実な情勢となっている。それだけに、政局の混乱が続けば、経済低迷で不良債権が増加する同国金融業界への影響は避けられない。