スイス特殊化学大手のクラリアントは25日、サウジアラビア基礎産業公社(SABIC)が同社の株式24.99%を取得し、筆頭株主になったと発表した。SABICは「現時点でクラリアントを完全買収する計画はない」としているものの、このところ主力の基礎化学品事業への依存度を引き下げ、収益性の高い特殊化学品事業を強化する方針を打ち出しており、市場ではクラリアント買収を狙っているとの観測が出ている。
SABICは米投資会社ホワイトテールなどからクラリアント株を譲り受けた。取得価格は明らかにしていない。取得した株の時価は20億スイスフラン超に相当する。
ホワイトテールはクラリアントが打ち出した米同業ハンツマンとの合併計画を受けて、クラリアントに7月に資本参加。その後、計画撤回を迫って出資比率を引き上げ、他の株主と共同で同計画を昨年10月に中止させた。
化学業界では収益力の低迷を背景に近年、M&A(企業の合併・買収)の動きが活発化している。クラリアントは単独で生き残るには事業規模が小さく、格好の買収標的となっていたことから、こうした事態を回避するためにハンツマンとの合併を目指した。だが、同合併計画に失敗したことで再び、買収標的になっている。
クラリアントの時価総額は現在、約94億ドルに上る。買収を実現するには通常、プレミアムの上乗せが必要なため、完全買収には100億ドル以上の資金が必要となる。このため完全買収は当面、見合わせるものの、出資比率をさらに引き上げて子会社化、ないし実質子会社化することも考えられる。
スイス銀バーダー・ヘルヴェアのアナリストはロイター通信に「SABICは少数資本出資で満足するような企業ではない」と述べ、クラリアントを買収する公算が高いとの見方を示した。また、クラリアントが2011年に買収した独触媒大手ズードケミーの取得に意欲を示していたことから、クラリアントの触媒事業のみを買収する可能性もあるとしている。