独銀最大手のドイツ銀行は8日、クリスティアン・ゼーヴィング副最高経営責任者(CEO)(47)を同日付で新CEOに任命することを監査役会が決議したと発表した。同行は業績が長期低迷していることからトップを入れ替えて刷新を図る考えだ。ジョン・クライアン前CEOは2020年の任期満了を待たずに今月末付で退任する。実質的には解任を意味する。
クライアン前CEOは2015年7月に就任した。前任者のアンシュー・ジェイン、ユルゲン・フィッチェンCEOは訴訟リスクを抱えていたことから、そうした心配のないクライアン監査役(当時)に白羽の矢が立てられた格好だ。
クライアンCEOは同行の業績を大きく圧迫してきた法務リスク問題の終結にめどをつけることに成功したものの、経営のスピード感に欠けるうえ、業績をどのように拡大していくのかという明確な道筋も最後まで提示できなかった。17年12月期に3期連続で最終赤字を計上したうえ、今年第1四半期の業績見通しも不良だったことから、風当たりが強まっていた。
パウル・アハライトナー監査役会長がクライアン氏の後任探しに乗り出したとの観測が3月に流れると、市場では同行の先行きに対する懸念が強まり、株価が下落。監査役会はこれを受け後任者の選定作業を加速し、8日に新頭取を決定した。
ゼーヴィング新CEOは1989年の入行以来、ほぼ一貫して同行に勤務してきた。日本駐在の経験もある。15年1月に取締役となり、17年3月からは副頭取も務めてきた。これまではリテール部門の統括責任者だった。アハライトナー監査役会長は記者団にゼーヴィング新CEOは実行力とチームワーク力が高くトップにふさわしい人材だと太鼓判を押した。
ゼーヴィングCEOは就任翌日の9日、従業員向けのメッセージを公表。ドイツ銀は事業の整理や自己資本の強化など多くのことを成し遂げたとこれまでの成果を指摘したうえで、業界を取り巻く環境の急速な変化を踏まえてさらに発展していかなければならないと強調し、収益力の強化に向けて「狩人精神」を取り戻すとともにチームワークを大切にするよう要求した。また、これまでは業務プロセスのスピードが遅かったと反省したうえで、無駄な手続きや重複業務を削減する意向を表明した。調整済みベースのコストについては今年230億ユーロ以内に抑制することを至上命令としている。
同行が収益・コスト目標をこれまで達成できなかったことに関しては、「それなりの言い分があるのだろうが、経営陣はそうしたことを今後、許容しない」と明言。「この点については厳しい決断を下し貫徹する」と強い姿勢を示した。
ドイツ銀は同日の声明で、投資銀行部門を統括するマルクス・シェンク副CEOが退任することも明らかにした。シェンク副CEOは次期CEO候補の1人と目されてきた経緯があり、ライバルであるゼーヴィング氏のCEO就任を受けて辞任を決めたもようだ。