欧州議会は5日の本会議で、2001年に制定されたEU著作権指令に代わる「デジタル単一市場(DSM)における著作権指令(案)」を反対多数で否決した。欧州議会法務委員会は6月下旬に指令案を承認していたが、焦点の「リンク税」などをめぐって反対意見が根強く、本会議では賛成278、反対318、棄権31の僅差で否決された。欧州議会は指令案を修正したうえで、9月に再度採決を行う。
DSM著作権指令案は欧州委員会が2016年7月に提案し、欧州議会とEU加盟国の間で議論されてきた。加盟国は5月下旬の常駐代表委員会(COREPER)で指令案を承認しているため、9月の欧州議会本会議で修正案が可決されると、採択に向けて閣僚理事会および欧州委との交渉がスタートする。
指令案で最大の焦点となっているのは、ニュース記事の抜粋(スニペット)を掲載するアグリゲーションサービスに対し、著作権使用料の支払いを義務づける「リンク税」の導入。新聞、雑誌、ネットメディアなどの「報道出版物」を対象としたもので、学術専門誌は含まれない。米グーグルが提供するグーグル・ニュースなどを標的としていることから、「グーグル税」とも呼ばれる。報道機関や媒体社がスニペット表示によって正当な対価を得られる仕組みを整えるのが狙いだが、反対派からはフェイクニュースの表示が増える可能性などが指摘されている。
もう1つの焦点は、グーグル傘下のユーチューブをはじめとする共有サイトなどのインターネットプラットフォームに対し、ユーザーが投稿するコンテンツが著作権を侵害していないかどうかを事前にチェックする技術の導入を義務付けるという内容。違法コンテンツが投稿された場合、プラットフォーム運営者が著作権侵害について不法行為責任を問われる可能性があり、反対派からは「インターネットの自由が脅かされる」といった批判が寄せられている。