欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/7/14

西欧

欧州金融市場、ポルトガル金融不安で動揺

この記事の要約

欧州の金融市場が、ポルトガルの金融システムに対する懸念で動揺している。同国最大手銀行バンコ・エスピリト・サント(BES)の親会社の経営不安により、沈静化していたポルトガルの金融・債務危機が再燃する恐れが広がったためで、欧 […]

欧州の金融市場が、ポルトガルの金融システムに対する懸念で動揺している。同国最大手銀行バンコ・エスピリト・サント(BES)の親会社の経営不安により、沈静化していたポルトガルの金融・債務危機が再燃する恐れが広がったためで、欧州全域で10日に株価が下落。周辺国の国債も値下がりした。11日にBESやポルトガル当局が火消しに務めたことで混乱拡大はとりあえず回避されたが、ギリシャに端を発したユーロ危機の影響がなお尾を引いていることが改めて浮かび上がった格好だ。

今回の事態の発端となったのは、BESなどが属するポルトガルの企業グループ「グルポ・エスピリト・サント」の親会社であるエスピリト・サント・インターナショナル(ESI)。ルクセンブルクに本社を置くESIは、5月に赤字隠しの疑いが浮上し、経営が不安視されていた。10日に短期債務の返済延期が明らかになったことで、経営不安が傘下のBESや、同行の筆頭株主である系列企業エスピリト・サント・フィナンシャルグループ(ESFG)に飛び火し、BESの株価は同日に17.2%下落。これを受けてポルトガルの主要株価指数が4.18安となった。

この影響は国外にも及び、同日の欧州株式市場は財政・金融不安を抱えるスペイン、イタリアを中心に同時株安となった。さらに、ポルトガル、スペイン、イタリア、ギリシャなどの国債も値下がりし、利回りが上昇した。

ポルトガルはギリシャの信用不安の余波で債務危機に陥り、金融機関の経営も悪化したが、2011年4月にEUと国債通貨基金(IMF)から総額780億ユーロの金融支援を取り付けて財政再建に取り組んだ。ようやく危機が沈静化し、5月に支援を脱却したばかりだった。

BESは国内上位3行の中で、同危機を公的支援に頼らず乗り切った唯一の銀行。しかし、グルポ・エスピリト・サントの構造が複雑で、グループ企業間で株式を持合い、資金を融通し合うなど不透明な部分が多いことから、ESIの問題で同行にも影響が及ぶとの懸念が広がり、混乱に拍車をかけた。これがユーロ危機再燃の不安をあおり、欧州だけでなく米国でも株安を引き起こした。

混乱がとりあえず収まったのは、BESが11日、グループ企業に対する融資、株式保有を含む債権が6月末時点で11億8,000万ユーロとなっているのに対して、資本に21億ユーロの余力があり、仮に損失が生じたとしても十分に対応できると発表したのがきっかけ。ポルトガル政府や中央銀行が、BESの経営は健全と強調したこともあってパニックには至らず、同日に同行の株価は続落して5.5%安となったものの、主要株価指標は0.62%高で引けた。その他の国の株価や、ポルトガルと周辺国の国債価格も持ち直した。