日本とEUは17日、経済連携協定(EPA)に署名した。英国がEUを離脱する2019年3月末までの発効を目指し、国会と欧州議会の批准手続きに入る。発効すると、世界の国内総生産(GDP)の約3割、世界貿易の約4割を占める世界最大規模の自由貿易圏が誕生する。日欧はEPAを通じて自由貿易体制を推進し、米トランプ政権の保護主義的な通商政策に対抗する。
安倍晋三首相とEUのトゥスク大統領、欧州委員会のユンケル委員長が首相官邸で会談し、EPAに署名した。安倍首相は共同記者会見で「世界で保護主義的な動きが広がる中、日本とEUが自由貿易の騎手として世界をリードしていきたい」と強調。トゥスク大統領は「EPAは日欧が連携して保護主義に立ち向かうという明確なメッセージだ。EUと日本は(他の地域に対して)引き続き協力への扉を開いている」と述べた。
関税分野では、品目数ベースで日本側が94%、EU側が99%の関税を撤廃する。日本側は現在29.8%の関税をかけているカマンベールやモッツァレラなどのソフトチーズに低関税の輸入枠を設け、初年度の2万トンから16年目には最大3万1,000トンに枠を広げて段階的に関税を撤廃する。欧州産ワインについては協定の発効後、関税を即時撤廃。パスタとチョコレート菓子も発効後10年で関税を撤廃する。さらに欧州産の牛肉や豚肉に対する関税も段階的に削減する。
一方、EU側は日本製の乗用車にかけている10%の関税を協定発効から8年目に撤廃するほか、自動車部品については貿易額ベースで92.1%にあたる品目について、協定発効後、直ちに関税を撤廃する。緑茶、しょうゆ、日本酒や焼酎などの関税も即時撤廃する。
EPA交渉は昨年7月、関税分野と知的財産保護などのルール分野で大枠合意に達した。しかし、投資紛争の解決制度をめぐって双方の溝が埋まらず、12月に同項目を協定本体から分離して交渉全体の妥結を優先させることで正式合意した。企業と国家の紛争解決制度に関しては、日本側が環太平洋経済連携協定(TPP)などに盛り込まれている「投資家対国家の紛争解決(ISDS)」条項の維持を訴えているのに対し、EU側はISDSに代わるメカニズムとして、常設の投資裁判所の設置を提案している。
なお、日欧首脳はEPAへの署名に先立ち、テロ対策や気候変動をはじめとする国際的課題での協力強化を定めた「戦略的パートナーシップ協定」にも署名した。