EU加盟国は2日に開いた財務相理事会で、EUの付加価値税(VAT、日本の消費税に相当)制度について、各国に電子書籍の税率を引き下げることを認める改革案で合意した。これによって加盟国は独自の裁量で、電子書籍の税率を紙の出版物と同じ低水準に設定することが可能となる。
EUではVAT制度が中央集権化されており、加盟国は標準税率を15%以上とすることを求められている。一部の品目では軽減税率(最低5%)、超最低税率(5%以下)を適用し、さらに非課税とすることが認められているが、対象品目はEUが定める。
今回の合意により、加盟国の裁量が拡大され、電子書籍も紙の出版物と同じく軽減税率、超最低税率を適用したり、非課税とすることが認められる。超最低税率の適用、非課税扱いに関しては、紙の出版物に適用している場合に限られる。
これまでVATでの電子書籍の扱いは微妙で、フランスとルクセンブルクが電子書籍にも軽減税率を適用したものの、電子書籍を標準税率の課税対象となる電子的なサービスと位置づけるEUと対立し、EU司法裁判所が2015年にEU法違反とする判決を下した経緯がある。
しかし、同判決を機に、硬直したVAT制度が経済のデジタル化など時代の変化に追いついていないという批判が噴出。欧州委はこうした状況を踏まえ、時代に沿った制度運用が必要として、制度改革に向けた行動計画を16年4月に発表していた。電子書籍のルールの改正は、同行動計画の一環となる。
同計画では、EUが対象品目を指定する制度を廃止し、加盟国が自由に決めることができるようにすることが柱となっている。これをめぐる協議が進行中であることから、電子書籍の新ルールは全体的な制度改革が決まるまで暫定的に施行される。