英政府は10月29日、グーグル、アマゾンなど大手IT企業を対象とする「デジタルサービス税」を導入すると発表した。世界的に活動する多国籍IT企業の課税逃れを防ぐのが狙い。2020年4月の導入を目指す。
ハモンド財務相が19年度予算案をめぐる演説で明らかにした新税制案は、検索エンジンやソーシャルメディア、ネット通販などのプラットフォームを運営する企業のうち、世界の売上高が5億ポンド(約720億円)以上の企業。英国内で稼いだ収入に2%を課税する。年間4億ポンド程度の税収を見込む。
現在の課税制度では、国内にオフィスや工場など物理的な拠点を持たない企業に対し、原則として法人税を課せない仕組みとなっており、インターネットを通じて国際的に事業展開する企業は法人税率の低い国に利益を移転することで税金を低く抑えるケースが多い。英政府はこうした状況を問題視し、国内での収入に課税する方針だ。ハモンド財務相は「英国事業で利益を得ているグローバルな巨大企業が公平に税金を払うのは、極めて当然のことだ」と述べた。
IT企業への課税をめぐっては、20カ国・地域(G20)やEUも課税逃れ対策を検討している。EUの欧州委員会は3月、デジタル税の導入を提案。世界全体の売上高が年間7億5,000万ユーロを超え、EU域内の売上高が5,000万ユーロを上回る企業に、加盟国が同国内の売上高に3%を課税する方針を打ち出した。しかし、低税率を武器にIT企業を誘致してきたアイルランドやルクセンブルク、米国の報復措置を恐れる北欧諸国などが難色を示し、協議は進んでいない。
こうした状況下で、英政府は単独でIT企業への課税に踏み切ることを決めた。ただし、国際的なルールが整備されれば、独自のデジタル税を廃止するとしている。