EUの銀行ストレステスト、英銀が苦戦

欧州銀行監督機構(EBA)は2日、EU域内の大手銀行48行を対象に実施したストレステスト(健全性審査)の結果を公表した。英国のEU離脱に伴う金融市場の混乱や景気の悪化を前提にした「悪化シナリオ」では、中核的な自己資本比率が2017年末の平均14.0%から20年末に10.1%まで低下するものの、健全性の目安とされる5.5%を下回る銀行はなかった。

EBAはEUの経済成長率が標準的予測の「基本シナリオ(ベースライン)」と、銀行システムの安定性を脅かす一連のシステミックリスクを反映した「悪化シナリオ」の両方で、対象行が景気の悪化や金融市場の混乱に対応できる十分な資本を保有しているかどうかを評価した。今回は英国の「合意なき離脱」や政治的な先行き不透明感の高まりなどを想定し、09年の審査開始以来、最も厳しい条件を設定した。

EUの実質域内総生産(GDP)がベースラインより8.3%低くなる◇EUの失業率がベースラインより3.3ポイント高くなる――などを含む悪化シナリオでは、EBAは48行の中核的な自己資本比率が合わせて395ベーシスポイント目減りすると試算。20年末時点の自己資本比率は英バークレイズ6.37%と最も低く、伊バンコBPM(6.67%)、英ロイズ・バンキング・グループ(6.80%)と続く。さらに仏ソシエテ・ジェネラルは7.61%、経営再建中のドイツ銀行は8.14%などとなっている。

2年前の前回審査と同様、EBAは個別の「合否判定」を示していないが、全ての銀行が過去のテストで合格ラインとされた5.5%を上回った。ただし、同水準を大きく上回る自己資本比率を維持できない銀行に対しては、欧州中央銀行(ECB)が資本増強を求める可能性がある。

今回のテストでは、審査対象となった48行のうち33行がユーロ圏に本拠地を置いている。EBAによると、これらの銀行の中核的な自己資本比率は悪化シナリオの下でも9.9%と、健全性の目安である5.5%を大きく上回った。ECBは声明で「ユーロ圏の銀行は2年前と比べ、マクロ経済上の衝撃に耐える力が強くなっていることが確認された」と評価した。

上部へスクロール