EUは5日に開いたユーロ圏財務相会合で、欧州委員会がイタリアに2019年予算案の見直しを要求している問題について協議した。イタリア政府は修正を拒否しているが、他の18カ国は欧州委の決定を支持。同予算案はEUの財政規律に違反しているという欧州委の評価に「同意する」として、イタリア側に見直しに応じるよう求める声明を会合後に発表した。
累積債務がGDP比131%と、ユーロ圏でギリシャに次ぐ高水準にあるイタリアは、EUから財政健全化を求められている。しかし、6月に発足したポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と「同盟」の連立政権は、19年の財政赤字をGDP比2.4%とすることを決定。赤字幅はEUの財政規律で上限となっているGDP比3%を下回るものの、前政権が目標としていたGDP比0.8%を超える。
さらに、GDP比0.6%に相当する構造赤字を削減するというEUの要求に反して、逆に0.8%膨らむことから、欧州委は11月下旬に見直しを指示した。EUが加盟国の予算案を拒否するのは、予算を欧州委が事前に審査する制度が導入されてから初めて。伊政府は13日までに修正案を提出することを求められている。
欧州委は19年予算案に退職年齢の引き下げ、貧困層への特別給付、自営業者の減税などが盛り込まれ、「ばらまき政策」となっていることを批判している。これに対してイタリア側は、歳出拡大で景気が浮揚すれば債務圧縮につながると反論し、見直しに応じない構えだ。
しかし、ユーロ圏財務相会合では、イタリアの財政健全化が後退し、財政が悪化すれば同国だけでなくユーロの信用が脅かされ、ユーロ圏の他の国も巻き込んだ債務危機に発展するとして、18カ国が欧州委の判断を支持。声明は「イタリアと欧州委がオープンで建設的な対話を行い、(EUの)財政規律に沿って予算案を修正するため欧州委と協調することを期待する」という文言を盛り込み、イタリアにEUと予算案修正に向けた協議に入るよう求めた。