英がEU離脱協定案を閣議承認、議会の批准が新たな焦点に

2018年11月19日発行 No.224号

英政府は13日、同国のEU離脱をめぐる実務者レベルの交渉で、離脱条件を定めた協定案などについて暫定合意したと発表した。これを受けて14日に開いた臨時閣議で協定案が承認され、25日に開かれる予定のEU臨時首脳会議で双方が正式合意する見通しとなった。これによって「合意なき離脱」の回避に向けて一歩前進したが、英国議会で批准されるかどうか不透明で、先行きはなお不透明な情勢だ。

暫定合意したのは、離脱協定と離脱後の通商関係などの大枠を定める政治宣言案。北アイルランドとEU加盟国アイルランドの厳しい国境管理を避けるための方策で合意した。このほか◇英国が2019年3月末にEUを離脱した直後に双方の関係が激変し、貿易などに大きな影響が及ぶのを避けるため「移行期間」を設定し、英国が2020年12月末までEU単一市場と関税同盟にとどまる◇同期間中は英国がEUのルールに従う一方、意思決定には参加できない◇英国がEUに390億ポンドの「手切れ金」を支払う◇離脱前に英国に居住しているEU出身者、他のEU加盟国に居住している英国出身者の権利を離脱後も保障する――ことなどが盛り込まれた。

EUと英国の離脱交渉で最大の焦点となっていたのは、北アイルランドとアイルランドの国境管理問題。双方は昨年12月、英国がEUを離脱してからも人やモノの流れを制限しないようにするため、厳しい国境管理を避けることで合意したものの、それをどのような形で実現するかをめぐる交渉が難航していた。EU離脱が目前に迫る中、同問題を先送りして、移行期間中に行われる包括的な通商協定に関する協議の中で解決する方針で一致したが、移行期間中に解決できない場合の「バックストップ(安全策)」をめぐる調整が難航。期限内に妥結できず、大きな混乱を招く「合意なき離脱」に至る恐れが浮上していた。

実務者レベル協議では、移行期間中に解決できない場合は期限付きで英国が関税同盟にとどまり、関税ゼロなど現在と同様の通商関係を維持することで合意した。バックストップでは北アイルランドだけを関税同盟に残留させるというEU案に、アイルランドと英本土の間に事実上の国境が引かれるとして反発していた英国に配慮した格好となる。さらに、協議の時間が必要と判断した場合に、移行期間を延長することでも合意した。延長するかどうかを20年7月1日までに合意の上で決めることになる。

英国内では「ハード・ブレグジット(強硬離脱)」派が、離脱から当面はEUのルールに従わなければならないことなど問題視している。与党・保守党内でもメイ首相の方針に反対する勢力があり、臨時閣議では29人の閣僚のうち10人が反対に回ったが、メイ首相は反対意見を押し切って了承を取り付けた。

メイ首相は12月中に議会での批准を完了したい考えだ。しかし、強硬離脱派の議員の間では、バックストップ措置が一時的なものとされているものの、最終的な解決策が見つからず恒久化され、関税同盟に残留することになり、EU域外の国との新たな通商協定をめぐる協議を進める際の障害になるといった声が出ている。15日には合意内容に反発し、離脱交渉の責任者であるラーブEU離脱担当相とマクベイ雇用・年金相の2閣僚と2人の閣外相が辞任を表明した。メイ氏の不信任投票実施を目指す動きも出ており、なお曲折が予想される。

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