伊の予算案を規律違反と正式認定、制裁手続きに着手へ=欧州委

欧州委員会は21日に発表したユーロ参加国の2019年予算案に関する審査報告書で、イタリアがEUの財政規律に違反していると正式認定し、制裁に向けた手続きに着手する方針を示した。EU財務相理事会の承認を経て、赤字是正手続きを発動し、それでも伊政府が予算案修正に応じない場合は制裁を科す。

累積債務が国内総生産(GDP)比131%と、EUの財政規律で上限となっている60%を大きく超えるイタリアは、EUから財政健全化を求められている。しかし、6月に発足したポピュリズム(大衆迎合主義)政党「五つ星運動」と「同盟」の連立政権がまとめた19年予算案は、退職年齢の引き下げ、貧困層への特別給付、自営業者の減税などを盛り込んだ“ばらまき”政策の色彩が濃い内容。19年の財政赤字はGDP比2.4%で、赤字幅はEUの財政規律で上限となっているGDP比3%を下回るものの、前政権が目標としていたGDP比0.8%を超える。さらに、構造赤字はGDP比1%に膨らむ。欧州委は見直しを求めたが、伊政府は応じず、期限の13日までに修正案を提示しなかった。

欧州委は報告書で、前政権が進めていた財政緊縮からの方向転換が成長を押し上げ、債務圧縮につながるとする伊政府の主張に対して、予算案には成長戦略がなく、債務が一層膨らむ恐れがあると指摘。欧州委のドムブロフスキス副委員長は記者会見で、「イタリアの予算案がEUの財政規律に対する極めて深刻な違反であることを確認した」とコメント。過剰赤字是正手続きの発動が「正当化される」と述べた。

欧州委は12月3、4日に開かれるEU財務相理事会で、イタリアへの過剰赤字是正手続きの発動を勧告する予定。理事会は1月に発動を承認する見通しだ。

同手続きが発動されると、EUはイタリアに一定の猶予期間を与えた上で、赤字是正を求める。これにイタリアが応じなければ、GDPの最大0.5%に相当する制裁金の支払いを命じる可能性がある。EUが財政規律違反で制裁に踏み切るのは初となる。

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