欧州委がユーロの役割強化策発表、エネルギー取引決済の促進など

欧州委員会は5日、2019年1月に誕生から20年を迎える単一通貨ユーロの国際的役割を強化するための取り組みをまとめた政策文書を発表した。ドル建てが中心のエネルギー資源やコモディティ取引などでユーロ決済を促進することが柱。英国のEU離脱が迫る中、ユーロの戦略的重要性を再確認し、政治、経済、金融分野におけるユーロ圏の影響力を高める狙いがある。

欧州委によると、国際決済でユーロが占めるシェアは米ドルとほぼ同水準の36%に上るが、国債の発行額や世界の外貨準備に占める比率はドルの約6割に対し、ユーロは2割程度にとどまる。

欧州委がユーロの国際的役割強化を政策として打ち出した背景には、米国が5月にイラン核合意を離脱したことに伴い、米国による制裁を恐れて多くの欧州企業がイランとの取引停止を余儀なくされたことが背景にある。

欧州委はユーロの利用拡大を図る意義について「開かれた、ルールに基づく多国間の世界経済と貿易に対する欧州の決意」と強調。世界の市場参加者にドル以外の選択肢を提供することで、「国際金融システムの弾力性改善に貢献する」と説明した。さらに中国など新興国の台頭に伴い国際通貨が多様化する状況に備え、欧州企業のリスクを低減する狙いもある。

欧州委はEUのエネルギー輸入額が年間およそ3,000億ユーロに上ると指摘し、加盟国に対して原油などの国際取引をドル建てからユーロ建てに変更するよう呼びかけた。さらに貴金属や穀物などのコモディティや航空機なども重点分野と位置付け、近く関係する各方面とユーロの利用拡大について協議したうえで、来夏までに報告書をまとめる方針を示している。

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