EUは4日開いた財務相理事会で、金融機関を通じたマネーロンダリング(資金洗浄)を防止するための行動計画を採択した。域内の大手銀行が関与した資金洗浄疑惑の詳細な検証や、加盟国とEU当局間の情報共有と協力体制の強化など、2019年末までに実施すべき取り組みが盛り込まれている。
テロ組織への資金供給ルートに利用されやすい資金洗浄を取り締まるため、EUでは「マネーロンダリング指令」の改正を重ねてきた。しかし、国によって犯罪行為の認定や処罰の基準にばらつきがあるためEU全体で有効な対策を取ることができず、資金洗浄の横行を許してきたのが実情。今年に入り、ラトビアのABLV銀行やデンマークのダンスケ銀行などが関与した資金洗浄疑惑が相次いで発覚したほか、9月にはオランダのINGグループが適切な顧客管理を怠った結果、同行の口座が資金洗浄や不正送金に利用されたとして、7億7,500万ユーロの和解金を支払うことでオランダ検察当局と合意している。
こうした現状を踏まえ、財務相理は資金洗浄を防止するため一段の取り組みが不可欠との認識で一致。短期的な取り組みとして◇域内の銀行が関与した最近の資金洗浄疑惑の全容解明◇金融機関の監督当局と資金洗浄の取り締まりを担当する検察当局などの連携強化◇重大な違法行為を犯した銀行に対する免許取り消し処分の基準の明確化◇監督体制の強化と関係する当局間の効率的な情報共有――など8つの目標を掲げ、項目別に具体的な行動と実施期限を定めた行程表を採択した。
ただ、行動計画には法改正に向けた勧告は含まれていない。また、欧州委員会が提案している欧州銀行監督機構(EBA)の権限強化や、欧州中央銀行(ECB)が新設求めている金融システムへの不正資金の流入を監視するEU共通の監督機関にも触れていない。このため、資金洗浄対策の強化に向けた金融監督制度の抜本改革は後回しになる可能性もある。