EUは14日の首脳会議で、ユーロ圏の統合深化に向けた機構改革案について協議し、ユーロ圏共通予算の創設に向けて2019年6月の大枠合意を目指す方針で一致した。今後、各国の財務相が予算の規模や導入時期などの検討を進める。
首脳会議の総括文書によると、改革案の柱であるユーロ圏共通予算は、ユーロ参加国の競争力強化や圏内の経済格差是正を目的に、EU予算の一部として創設される。共通予算の規模は来年3月にEUを離脱する英国を除いた加盟27カ国が協議して決める。
機構改革の提唱者であるマクロン仏大統領は、EU予算とは別に、ユーロ圏の域内総生産(GDP)の「数パーセント」規模の共通予算を設けることを提案していた。しかし、EU予算自体がユーロ圏GDPの約1%であるため、今回の合意により、共通予算の規模は大幅に縮小する見通しだ。また、ドイツは共通予算をユーロ圏の経済安定化に活用することを提案していたが、オランダや北欧諸国が強く反対し、採用が見送られた。
共通予算をめぐっては、ユーロ参加国間の経済格差是正に使われることについて、財政規律を守る豊かな国が放漫財政の国の尻ぬぐいをさせられるとして難色を示す国が多く、これまで調整が難航した。各国の財務相らによる今後の協議でも妥協点が見いだせるか不透明な情勢だ。
このほか首脳会議では、ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)の機能強化策を承認した。EU内の銀行の破綻処理に活用される「単一破綻処理基金(SRF)」の資金が不足した場合、ESMの資金を銀行救済にも活用できる仕組みを2024年までに導入する。一方、健全な財政運営を続けてきたにもかかわらず、突発的な経済危機など不測の事態で厳しい状況に陥ったユーロ参加国の政府に対し、ESMが融資することを認める案に関しては、ユーロ圏で別の財源を確保すべきだとの反対意見が多数派を占め、採用を見送った。