著作権指令改正めぐる協議が難航、加盟国の溝埋まらず

EU著作権指令の改正に向けた協議が暗礁に乗り上げている。21日には加盟国、欧州議会、欧州委員会による三者協議が予定されていたが、18日に開いたEU各国の大使級会合で著作権指令の改正案が否決されたのを受け、開催が見送られた。欧州議会は昨年9月に改正案を可決しているが、大手IT企業が活発なロビー活動を展開する中、加盟国間の意見調整が難航しており、5月末の欧州議会選挙までに新指令が成立するかは不透明だ。

欧州委は2016年7月、インターネット上の著作権保護を強化する「デジタル単一市場(DSM)における著作権指令(案)」を発表した。改正案の柱の1つは、報道機関などが配信したニュースを検索サイトなどに掲載した場合、サイト運営者に使用料の支払いを義務付ける仕組みの導入(第11条)。「リンク税」と呼ばれるもので、ニュース記事の全文を掲載する場合だけでなく、記事の見出しやスニペット(短い抜粋)をまとめて表示するサービスも課金の対象となる。

リンク税は新聞や雑誌などの報道出版物を対象としたもので、学術専門誌は含まれない。米グーグルが提供する「グーグル・ニュース」などを標的としていることから、「グーグル税」とも呼ばれる。著作物の利用をめぐり、報道機関や媒体社が正当な対価を得られる仕組みを整えるのが狙いだが、反対派からはフェイクニュースの表示が増える可能性などが指摘されている。

もう1つの柱は、グーグル傘下の「ユーチューブ」をはじめとするインターネットプラットフォームを運営する事業者(プラットフォーマー)に対し、「コンテンツフィルター」を導入してユーザーが投稿する動画などが著作権を侵害していないかどうかを事前にチェックし、適切に対処することを義務付けるという内容(第13条)。違法コンテンツが投稿された場合、現行ルールでは権利者が著作権侵害の申し立てを行い、これを受けてプラットフォーム側が当該コンテンツを削除する仕組みになっているが、新ルールが導入されるとプラットフォーマーは違法コンテンツを能動的に排除しなければならず、対応が不十分な場合は不法行為責任を問われる可能性がある。

こうした規制に対し、反対派からは「インターネットの自由が脅かされる」といった批判が寄せられており、欧州議会では規制の対象を「オンライン上のコンテンツ共有サービス事業者」と明記し、中小企業が運営するサービスを対象から除外する修正を加えてようやく可決にこぎつけた経緯がある。

欧米メディアによると、18日の大使級会合では13条の適用を除外する中小企業の範囲をめぐって加盟国の意見調整がつかず、ドイツやオランダなど11カ国が改正指令案に反対を表明したもよう。このため欧州議会の一部議員からは、13条を削除して現行指令の改正を優先すべきだといった意見も出ている。