欧州委員会は6日、独電機大手シーメンスと仏鉄道車両・設備大手のアルストムが鉄道事業を統合する計画を認可しないと発表した。欧州の鉄道車両、信号システム市場での健全な競争が損なわれると判断した。これによって両社は統合を断念。中国企業に対抗するため、欧州の巨大鉄道エンジニアリング企業の誕生を支持していた独仏政府は同決定に反発し、EU競争法の見直しを求めている。
シーメンスは2017年9月、鉄道事業を柱とするモビリティソリューション部門をアルストムと統合し、新会社シーメンス・アルストムを設立すると発表した。しかし、欧州委は鉄道車両、信号システムの分野で競争が阻害され、最終的に消費者に悪影響を及ぼす恐れがあるとして認可に難色を示し、18年10月に両社に対して異議告知書を送付した。英国、オランダ、ベルギー、スペインの競争当局も統合に反対していた。
これに対して両社は12月に競争上の是正策を提案したが、欧州委は同措置では不十分と判断。統合を認めると信号システム、次世代の高速鉄道車両の価格が跳ね上がるとして、計画を承認しないことを決めた。
この統合計画をめぐっては、中国国営の中国中車(CRRC)が対象分野で圧倒的なシェアを持つことから、両社と独仏政府は欧州大手2社の統合が不可欠と主張していた。これに関して欧州委は、EUの鉄道エンジニアリング市場は中国企業の脅威にさらされていないとして、言い分を認めなかった。
シーメンスとアルストムは、欧州委の認可を取り付けることができなかったため、統合を断念する意向を表明。アルストムは声明で、欧州委の決定を「欧州の鉄道産業が後退するのは明らかだ」と遺憾の意を示した。独仏政府も仏ルメール経済・財務相が中国を利するもので「政治的な誤りだ」と批判するなど、猛反発している。
ドイツとフランスでは、今回の事態を受けて、EUが合併・買収を厳しく制限する競争法をグローバルな視点で柔軟に運用することが必要と指摘との声が出ており、アルトマイヤー独経済相は両国政府がEUに競争法の見直しを共同提案する予定であることを明らかにした。