EU加盟国と欧州議会は5日、デリバティブ(金融派生商品)取引に関する報告義務などを定めた欧州市場インフラ規則(EMIR)改正案の内容で基本合意した。デリバティブ取引を活用している企業の負担軽減を図るため、報告義務を緩和したり、規模の小さい金融機関を対象に、中央清算機関(CCP)を通じた店頭デリバティブの清算義務を免除することなどが改正案の柱。閣僚理事会と欧州議会の正式な承認を経て新ルールを導入する。
EUは金融危機の再発防止策の一環として、2012年にEMIRを採択した。EU域内で活動する金融機関や事業会社は、原則としてすべての店頭取引の契約情報をデータ保管所に報告する義務を負う。情報開示を通じて市場の透明性を高め、市場の安定化につなげるのが狙いで、当局はデータを活用することで金融市場のリスクを早期に見つけやすくなる。
ただ、欧州委員会が金融危機後に導入されたさまざまな規制について意見募集を行ったところ、デリバティブ取引を活用している金融機関や事業会社にとってEMIRが大きな負担になっている現状が判明した。これを受けて欧州委は17年5月、店頭デリバティブ取引に関するルールを簡素化する改正案を発表した。
改正案によると、取引所を通じたデリバティブ取引(市場デリバティブ取引)についてはCCPのみが報告義務を負う。当事者間で取引を行う店頭デリバティブのうち、同一グループ内の取引(intragroup transaction)に関しては、一方が非金融事業会社(NFC)の場合、報告義務が免除される。さらに事業規模が小さい金融機関に対する負担軽減策として、店頭デリバティブの取引実績をもとに閾値を設定し、取引高が閾値を超えた銀行や資産運用会社に対してのみCCPを通じた清算を義務付ける。改正案にはこのほか、年金基金に対する集中清算義務の適用免除を3年間延長することなどが盛り込まれている。