欧州議会は3月26日の本会議で、インターネット上の著作権保護の強化を目的とするEU著作権指令の改正案を賛成多数で可決した。米グーグルなどのIT大手は音楽や動画を配信したり、ニュース記事をサイトに掲載する際、適正な使用料を著作権者に支払うよう求められる。
欧州委は2016年7月、デジタル時代に対応した著作権制度の確立に向け、現行指令に代わる「デジタル単一市場(DSM)における著作権指令(案)」を発表した。本会議では賛成348、反対274、棄権36で改正指令案が可決された。閣僚理事会の正式な承認を経て新指令が施行され、加盟国は2年以内に国内法を整備する必要がある。
改正案の柱の1つは、報道機関が配信したニュースを検索サイトなどに掲載したり、音楽や動画をネット配信する場合、サイト運営者に使用料の支払いを義務付けるルールの導入(第11条)。グーグルが提供する「グーグル・ニュース」などを標的としていることから「グーグル税」とも呼ばれる。
グーグル傘下の「ユーチューブ」などのインターネットプラットフォームを運営する「プラットフォーマー」が無断でニュース記事や音楽などを利用して、巨額の利益を得ている現状を改善し、著作権者が正当な対価を得られる仕組みを整えるのが狙い。教育・研究目的のコンテンツ使用のほか、ニュース記事などの「ごく短い抜粋」、パロディや風刺画などはこれまでと同様、規制の対象から除外された。
もう1つの柱はプラットフォーマーに対し、ユーザーが投稿する動画などが著作権を侵害していないかどうかを事前にチェックして、適切に対処することを義務付けるという内容(第13条)。違法コンテンツが投稿された場合、現行ルールでは権利者が著作権侵害の申し立てを行い、これを受けてプラットフォーム側が当該コンテンツを削除する仕組みになっているが、新ルール導入後はフィルターを導入するなどして自発的に違法コンテンツを排除しなければならず、対応が不十分な場合は法的責任を問われる可能性がある。
第13条をめぐっては、反対派の間で「インターネットの自由が脅かされる」といった批判が根強く、調整が難航した。最終的に◇設立から3年未満◇年間売上高が1,000万ユーロ未満◇月間ユーザー数が500万人未満――という3つの条件にあてはまるプラットフォーマーを規制対象外とすることで合意が成立した。