ボーダフォン、リバティ欧州事業買収めぐり譲歩案

英携帯電話サービス大手ボーダフォンは7日、米メディア大手リバティ・グローバルからドイツなど欧州4カ国のケーブルテレビ(CATV)事業を買収する計画の承認を得るため、スペインの通信大手テレフォニカの独子会社にドイツ国内のケーブル網を開放する譲歩案を欧州委員会に提示した。欧州委はライバル会社など利害関係者から意見を聞いたうえで、7月9日までに買収の可否を最終判断する。

ボーダフォンは昨年5月、リバティからドイツ、チェコ、ハンガリー、ルーマニアのCATV事業を184億ユーロで買収することで合意した。ボーダフォンにとっては2000年に独マンネスマンを買収して以来の大型案件となる。最大の柱は独CATV大手ユニティメディアの買収。取引が成立すると、2014年にカーベル・ドイチュラントを買収して独CATV市場に参入したボーダフォンの事業エリアはドイツ全土に広がり、通信最大手ドイツテレコムを追撃する体制が整う。

欧州委は初期調査の結果、買収が実現するとドイツのCATV市場で健全な競争が損なわれ、次世代ネットワークへの投資などに悪影響が及ぶ可能性があると判断。チェコでも寡占化が進む恐れがあるとして、昨年12月に本格調査に着手した。

通信事業者の業界団体VATMによると、ドイツの携帯電話市場ではドイツテレコムに次いでテレフォニカが2位、ボーダフォンが3位につけている。一方、ブロードバンド市場ではボーダフォンとリバティを合わせたシェアが34%に上り、首位のドイツテレコム(40%)に迫る勢い。テレフォニカは3位につけているものの、シェアは06年の14%から6%弱に縮小している。

欧州委が買収計画を認める条件としてボーダフォンの提案を受け入れた場合、テレフォニカはドイツ全土に広がるボーダフォンとリバティのケーブル網を利用して、高速インターネット接続サービスやテレビ事業を展開できるようになる。ボーダフォンは声明で「テレフォニカ・ドイチュラントは2,370万世帯をカバーするボーダフォンとリバティのケーブル網にアクセスし、ブロードバンドサービスを提供することが可能になる」と強調。近く欧州委にリバティとの取引が承認され、夏には買収手続きが完了するとの見通しを示した。

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