欧州委員会は18日、米半導体大手クアルコムがEU競争法に違反したとして2億4,200万ユーロ(約290億円)の制裁金支払いを命じたと発表した。同社は競合企業を市場から閉め出すため、製造コストを下回る価格で第3世代(3G)通信用のチップセットを提供しており、こうした「略奪的価格設定」が公正な競争を阻害したと判断した。クアルコムは決定を不服とし、異議を申し立てる意向を示している。
問題となっているのは、スマートフォンやタブレット端末などの無線通信や信号を制御する「ベースバンドチップ」と呼ばれる半導体の販売戦略。欧州委によると、クアルコムは2009年から11年半ばにかけて市場での支配的地位を乱用し、同分野で急速にシェアを拡大しつつあった英アイセラ(11年5月に米エヌビディアが買収)を排除するため、中国の華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)に製造コストを下回る価格でチップセットを販売した。
欧州委はクアルコムの商慣行をめぐり、15年7月に本格調査を開始。ベースバンドチップの販売で略奪的価格設定を行っているとして、同年12月に異議告知書を送付した。その後、クアルコムの戦略が市場に及ぼした影響を詳細に分析し、昨年7月には競争法違反を裏付ける追加的な証拠やデータを盛り込んだ補足異議告知書を送付していた。
欧州委のベスタエアー委員(競争政策担当)は声明で「クアルコムの戦略的行動は市場における競争とイノベーションを妨げ、消費者の選択肢を狭めた」と指摘した。
欧州委がクアルコムに科した制裁金は18年の売上高の約1.27%に相当する。同社の法務責任者ドン・ローゼンバーグ氏は声明で「欧州委は何年もかけて主要顧客へのチップセットの販売について調査を行ってきたが、問題とされた2社はいずれも価格ではなく、技術的な優位性から当社の製品を採用していた」と反論。欧州委の決定に対し、異議申し立てを行う意向を示した。