EUと米国は2日、肥育ホルモン剤を使用しない米国産牛肉のEUへの輸入を拡大することで正式に合意した。米欧間ではEUの輸入規制をめぐり、長年にわたって対立関係が続いていたが、米国に割り当てる無関税輸入枠を段階的に拡大することで決着した。欧州議会の承認を経て今秋にも発効する。
ホワイトハウスで署名式が行われ、ランブリニディス駐米EU大使やライトハイザー米通商代表部(USTR)代表らが合意書に署名した。欧州委員会によると、EUは肥育ホルモン剤を使用しない牛肉に対し、年間4万5,000トンの無関税輸入枠を設けているが、輸入枠全体の規模は維持したまま、米国産への割り当てを現在の1万3,000トンから7年後に3万5,000トンまで拡大する。USTRは段階的な割り当ての拡大により、米産牛肉の無関税でのEU向け輸出額は現在の年1億5,000万ドルから4億2,000万ドルに増加するとの見方を示している。
トランプ米大統領は署名式で「米国の畜産農家にとって大きな勝利だ」と強調。「EUは初年度に米産牛肉の無関税輸入枠を46%増やし、その後7年かけてさらに90%拡大する。全体では現在と比べて180%超の増加になる」と述べた。
ホルモン牛肉をめぐるEUと米国の対立は1980年代に遡る。世界貿易機関(WTO)は98年、発がん性などを理由とするEUの禁輸措置は科学的なリスク評価に基づくものではないとする米側の主張を認め、米国がEUに対して制裁措置を講じることを認める裁定を下した。さらにWTO上級委員会は2008年、米国による制裁措置は禁輸への対抗策として正当化できるとの裁定を下した。これを受けてEUは09年、成長を促すホルモン剤を使用しない牛肉について、年間4万5,000トンの無関税輸入枠を設けることを決めた。
ただ、この輸入枠は米国産に限定したものではなく、豪州やアルゼンチン、ウルグアイ産なども含まれているため、米国産のシェアが縮小傾向にあることに不満を募らせた米国は16年、EUに対する制裁措置の再実施に向けた調査を開始。紛争解決に向けた協議の末、EU側が7月に米国に対する無関税輸入枠の割り当てを拡大する合意案を受け入れ、閣僚理事会の承認を経て、今回の署名に至った。
ホルモン牛肉の問題は、ユンケル欧州委員長とトランプ大統領が昨年7月に合意した貿易摩擦の緩和に向けた取り組みに含まれていないが、欧米間の緊張緩和につながる可能性がある。ただ、トランプ氏は署名式の終了後、記者団に対し「EUとの協議で欧州の自動車に対する関税措置が除外されることはない。今後の交渉で自分が望んだ成果が得られない場合、追加関税を発動する可能性がある」と警告した。