欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2019/12/2

EU情報

新欧州委員会がようやく発足、欧州議会が人事を承認

この記事の要約

欧州議会は11月27日に開いた本会議で、次期欧州委員会の人事を賛成多数で承認した。

欧州議会の承認を経て、11月1日に新欧州委が発足することになっていた。

欧州委は北マケドニアとアルバニアとのEU加盟交渉開始を勧告し、大半の国が支持しているものの、フランスが強硬に反対し、実現に至っていない。

欧州議会は11月27日に開いた本会議で、次期欧州委員会の人事を賛成多数で承認した。これによってフォンデアライエン委員長が率いる新欧州委が12月1日に発足。EUの新体制が予定より1カ月遅れで始動する。

フォンデアライエン次期委員長は9月10日に新欧州委員の人事案を発表。欧州議会の承認を経て、11月1日に新欧州委が発足することになっていた。

しかし、欧州議会は10月、フランスのシルビー・グラール候補(域内市場担当)、ハンガリーのラースロー・トローチャーニ候補(EU拡大担当)、ルーマニアのロヴァナ・プルンブ候補(運輸担当)の3候補に利益相反などの疑いが浮上したことから承認を拒否。新たな候補の指名、承認手続きに時間がかかり、発足がずれ込んでいた。

本会議では3大会派が支持に回り、賛成461票、反対157票、棄権89票で欧州委の新体制がようやく承認された。

フォンデアライエン次期委員長は採決前の施政方針演説で、環境対策や欧州のデジタル化推進などを重要課題に挙げた。特に地球温暖化防止をはじめとする環境問題への対応を最優先課題に掲げており、2050年までにEU域内の温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にすることを目指す総合的な環境対策「欧州グリーンディール」計画のとりまとめが重要な任務となる。

一方、EUを取り巻く状況は厳しく、新欧州委は英国の離脱、米国との貿易摩擦、景気減速、難民、EU拡大など多くの問題に直面する。英の離脱に関しては、同国が12月12日に実施する総選挙で与党・保守党が下院で単独過半数を確保できなければ、離脱が再び宙に浮き、離脱期限の延期または合意なき離脱に至ることになる。保守党が勝てば離脱協定案に沿って1月末に離脱する見込み。それでも、新たな自由貿易協定(FTA)の締結に向けた交渉という大仕事が待ち受ける。

初の加盟国離脱で揺れるEUの結束も大きな課題だ。その象徴がEU拡大をめぐる加盟国間の対立。欧州委は北マケドニアとアルバニアとのEU加盟交渉開始を勧告し、大半の国が支持しているものの、フランスが強硬に反対し、実現に至っていない。フォンデアライエン次期委員長は演説で、できる限り早期に両国の加盟を実現したいと述べた。