EU加盟国は11月27日の大使級会合で域内の銀行が抱える不良債権の処理について協議し、法定外手続きによる担保執行(out-of
court
collateral
enforcement)と呼ばれる新たなメカニズムの適用対象や要件で合意した。欧州経済の成長と金融の安定化に向けて不良債権処理を加速させる取り組みの一環で、融資を行った銀行は法廷を介さず、不良債権の担保をより迅速かつ容易に取得できるようになる。欧州議会の承認を経て新ルールが導入される。
欧州銀行監督機構(EBA)によると、EU域内の銀行が抱える不良債権は今年6月時点で融資総額の約3%にあたる6,360億ユーロと、4年前の1兆1,500億ユーロ(融資総額の6%)の約半分に縮小した。しかしギリシャ、キプロス、ポルトガル、イタリアなどでは不良債権比率が依然として高い水準にあり、こうした国で債務・金融危機が再発し、他のEU諸国に波及する事態が懸念されている。
法定外手続きによる担保執行は、不良債権化した融資を行った銀行が、融資の裏付けとなる担保を取得しやすくするためのメカニズムで、銀行側の損失を最小限に抑えることができる。大使級会合で合意した内容によると、法定外手続きによる担保執行には銀行と借り手による事前(通常は融資を行う際)の同意が必要。対象となるのは企業向け融資のみで、個人向け融資には適用されない。
EU議長国を務めるフィンランドのリンティラ財務相は「借り手側を高い水準で保護する一方、融資を行った銀行が法廷を介さず、迅速に担保による債権回収を行うための法的手段を用意することが重要だ」と述べた。