欧州委がEU加盟手続き見直し案発表、加盟国に交渉停止の権限付与

欧州委員会は5日、EU拡大に向けた新規加盟手続きの見直し案を発表した。既存加盟国の権限を強化し、加盟条件を満たすための改革が後退したと判断した場合、加盟交渉を停止できるようにすることが柱。北マケドニア(旧マケドニア)とアルバニアとの交渉入りに反対するフランスの姿勢を軟化させ、5月にクロアチアのザグレブで開くEU・西バルカン首脳会議で交渉開始を正式決定したい考えだ。

EUはバルカン半島のセルビア、モンテネグロ、アルバニア、北マケドニアを「EU加盟候補国」、ボスニア・ヘルツェゴビナとコソボを「潜在的な候補国」と位置づけている。改革案を発表した欧州委のバルヘリ委員(近隣政策・拡大担当)は「西バルカン諸国へのEU拡大が欧州委にとって最優先課題だ」と強調。6カ国のEU加盟に向けて拡大手続きを見直し、より明確で信頼性が高く、予測可能なものにする必要があるとの考えを示した。

現在の加盟手続きでは候補国との交渉開始後、民主主義や法の支配の原則、市場経済、EU法の受容といった加盟条件を満たすための改革の進捗を欧州委が定期的に評価している。見直し案によると、改革が長期にわたり停滞したり、後退したと判断した場合、交渉を停止させたり、特定の政策分野で交渉のやり直しを命じる権限が加盟国に与えられる。一方、改革に十分な進展があったと判断した場合はEU機関からの投融資を拡大するなどのインセンティブを用意し、加盟基準の早期達成を支援する。

欧州委員会は昨年5月、北マケドニアとアルバニアについて、加盟条件を満たすための改革に進捗があったと判断し、両国との交渉開始を加盟国に勧告した。加盟国の大半は交渉開始を支持したものの、フランスは法の支配の徹底や汚職対策などが不十分だとして難色を示し、オランダやデンマークが同調。加盟交渉入りが先送りされた経緯がある。マクロン仏大統領は加盟国が増えれば移民問題などで意見集約がさらに難しくなるとして、まずEU内の改革を推進し、EU拡大のプロセスを見直す必要があると指摘していた。

仏政府高官は報道陣に対し、欧州委の提案は「正しい方向に向けた一歩だ」とコメント。欧州委の勧告に従い北マケドニアとアルバニアとの交渉入りを認めるかとの質問に対しては、他の加盟国と協議して結論を出すと述べるにとどめた。

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