仏鉄道車両・設備大手のアルストムは17日、カナダ同業ボンバルディアの鉄道事業を買収することで合意したと発表した。買収額は最大62億ユーロ。両社を合わせた売上高は160億ユーロを超え、アルストムは世界2位の鉄道メーカーに浮上する。
買収は現金支払いと株式交換を組み合わせた形で実施される。買収額は58億~62億ユーロに上る見通し。2021年上期の買収手続き完了を目指す。
アルストムは鉄道車両で世界最大手の中国中車(CRRC)に対抗するため、17年に独シーメンスと鉄道事業を統合することで合意したが、EUの欧州委員会から欧州の鉄道車両、信号システム市場での健全な競争が損なわれるとして承認されず、計画を断念した経緯がある。
買収するボンバルディアの鉄道部門「ボンバルディア・トランスポーテーション」の19年の売上高は約83億ユーロ。アルストムは同81億ユーロ程度で、CRRCの300億ユーロ(18年)には届かないものの、コスト削減効果などが見込め、CRRCを追撃する体制を強化できる。
アルストムのアンリ・プパールラファルジュ最高経営責任者(CEO)は、ボンバルディア・トランスポーテーションが欧州で大きな事業基盤を持つのはドイツ、英国にとどまっていることから、両社は補完的な関係にあるとして、EUの認可を取り付けることができると指摘。仮に問題が生じても、シーメンスとの事業統合と比べて競争上の是正策を講じるのが容易だとして、認可は「大きな問題とは考えていない」と述べた。
買収には株式交換が含まれるため、実現すればボンバルディア・トランスポーテーションの大株主であるカナダの年金基金、ケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)がアルストムの株式18%を保有し、筆頭株主となる。