イタリアのパトゥアネッリ産業相は23日、伊航空大手アリタリアを完全国有化する計画を発表した。ロイター通信などによると、政府が6月初旬に新会社を設立し、同社の全株式を取得するという。
パトゥアネッリ氏が下院運輸委員会で行った説明によると、アリタリアは新型コロナウイルスの感染拡大による影響で業績が落ち込んでおり、今年1月からの収益は前年同期比で87.5%減少した。一部で同社の保有機が現在の113機から30機程度に削減されるとの観測が流れたが、同氏は完全国有化の計画を表明したうえで「アリタリアは90機以上の体制で再スタートする」と述べ、報道を否定した。
アリタリアは2001年の米同時テロ以降に経営が悪化し、近年は格安航空会社(LCC)や高速鉄道との競争で業績が低迷。17年3月に大規模な人員削減を柱とする経営再建策をまとめたが、従業員が反対して株主から追加出資を受けることができなくなり、自主再建を断念。同年5月から政府の管理下で売却先を模索していた。これまでに欧州航空大手ルフトハンザ、エールフランスKLMなどが買収に名乗りを上げものの、イタリア政府との間で条件が折り合わず撤退。今年2月にはイタリア国鉄のフェッロヴィーエ・デッロ・スタート(FS)が米デルタ航空などとの共同買収に向けて交渉を開始したが、協議は難航していた。