2014/9/8

EUその他

排出枠売却益をエネ集約型産業などに、30年までの気候変動政策で提案へ

この記事の要約

EU加盟国は2030年に向けた気候変動・エネルギー政策目標について、10月中の合意を目指しているが、一部の加盟国が野心的な目標の設定に難色を示して調整が難航している。こうしたなか、エネルギー集約型産業と中東欧など財政状況 […]

EU加盟国は2030年に向けた気候変動・エネルギー政策目標について、10月中の合意を目指しているが、一部の加盟国が野心的な目標の設定に難色を示して調整が難航している。こうしたなか、エネルギー集約型産業と中東欧など財政状況が厳しい加盟国のコスト負担を軽減するため、向こう10年間で300億ユーロ規模の新たな支援策が検討されているもようだ。ロイター通信が1日、加盟国の首脳らで構成する欧州理事会から入手した報告書の草案をもとに報じた。

欧州委員会は今年1月、30年までに◇温室効果ガス排出量を1990年比で40%削減する◇再生可能エネルギーの利用比率をEU全体で27%まで引き上げる――などの目標を打ち出した。EUは20年を期限とする数値目標を掲げて達成に向けた取り組みを進めているが、早期に法的拘束力のある中期目標を設定することで、地球温暖化対策をめぐる国際間の交渉で主導権を握るのが狙い。現在、加盟国と欧州議会で欧州委の提案について検討が行われている。

ロイターによると、欧州委は欧州委案をさらに一歩進め、30年までに◇温室効果ガス排出量を90年比で40%削減する◇再生可能エネルギーの利用比率を30%に引き上げる◇エネルギー効率を90年比で30%改善する――という3つの数値目標を設定。その上で、EU排出量取引制度(EU-ETS)に基づく排出枠の売却による調達資金を活用し、エネルギー企業や製造業、さらに中東欧や旧ソ連諸国などの負担を軽減して目標達成を支援する計画を提案している。

具体的には21-30年に排出枠の売却で調達した資金のうち5%を「イノベーション促進基金」、4%を「近代化基金」の財源とし、前者をエネルギー集約型産業、後者を財政状況が厳しい加盟国への支援策に充てるという内容。EUはこれまでに「NER300」と呼ばれるプログラムのもと、約3億トン分の排出枠を売却して調達した20億ユーロ超の資金を革新的な再生可能エネルギー実証プロジェクトや二酸化炭素(CO2)回収プロジェクトに投入する計画を打ち出しており、欧州委の提案は同スキームを土台にしている。

トムソン・ロイター・ポイント・カーボンのアナリスト、マーカス・フェルディナンド氏はロイターの取材に対し、今後10年間にEU-ETSの対象施設に割り当てられる排出枠の規模や排出権価格の予測をもとにすると、2つの基金の資金規模は合わせて300億ユーロを超えるとの見方を示している。

報告書の草案にはこのほか◇EU-ETSの対象に含まれていないセクターについて国ごとに削減目標を設定する(たとえば英仏独は05年比で40%減とする一方、中東欧や旧ソ連諸国は1~8%減に抑える)◇カーボンリーケージ対策としてエネルギー集約型産業に無償配分している排出枠を拡大する(ただし、定期的に対象セクターを見直して効率的な運用を目指す)――などが盛り込まれている。