2020/10/5

EU情報

EUが英の離脱協定修正めぐり法的措置開始、FTA交渉は継続へ

この記事の要約

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は1日、英国がEUと締結した「離脱協定」の一部の条項を政府の判断で変更できるようにする国内法案を成立させようとしていることについて、同協定に基づく義務に違反しているとして、法的手続きに […]

欧州委員会のフォンデアライエン委員長は1日、英国がEUと締結した「離脱協定」の一部の条項を政府の判断で変更できるようにする国内法案を成立させようとしていることについて、同協定に基づく義務に違反しているとして、法的手続きに着手したと発表した。一方、同問題がありながらも自由貿易協定(FTA)など将来の関係をめぐる交渉会合が2日まで4日間にわたって行われたが、依然として双方の溝は深く、大きな進展がないまま終了。フォンデアライエン委員長と英ジョンソン首相は3日にテレビ会議方式で会談し、今後も交渉を続けることで合意した。

問題となっている英の国内法案は、離脱協定のうち英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境管理に関する部分を一方的に修正するというもの。EUとのFTA交渉が決裂した場合、英本土から北アイルランドに入る物品の関税ルールを英国の裁量で決めることが柱となっている。

これに猛反発するEUは、9月末までに法案を撤回するよう求めていた。しかし、法案は英国内でも国際協定違反との批判を浴びながらも、29日に下院を通過した。これを受けて欧州委は法的手続きに入った。

欧州委は第1段階として同日に異議告知書を英政府に送付。英政府が1カ月以内に適切に対応しない場合は、欧州司法裁判所に提訴する構えだ。

国内法案は上院での審議に移る。上院では与党・保守党が過半数を割り込んでいるため、審議に時間がかかるのは必至だ。採決までにFTA交渉がまとまれば、法案自体が立ち消えとなる。このため、EUは同問題と切り離してFTA交渉を予定通り進めた。

英国は1月31日にEUを離脱したが、20年12月末までは移行期間となるため、貿易など双方の関係は基本的に変わらない。同期間中にFTAや安全保障、外交、司法での協力など幅広い分野にまたがる将来の関係をめぐる交渉をまとめることになっている。

最大の焦点となるFTA交渉では、移行期間が終了する2021年1月以降も関税ゼロでの貿易の継続を目指すことで一致している。英政府はEUとカナダが締結した協定と同様のFTAを念頭に置く。

しかし、EU側が関税ゼロには公平な競争環境の確保が不可欠として、英国が今後もEUの競争法や公的補助、環境、労働者の権利などに関するルールに従うことを要求しているのに対して、英国はEUがカナダと締結したFTAで、このような要求をしておらず、国家の主権が侵害されるとして反発。このほか、英国が自国海域でのEU漁船の漁業権を制限しようとしていることも大きな障害となり、協議が難航している。

英国側は10月15、16日に開かれるEU首脳会議までの合意が必要として、交渉期限を15日に設定している。9回目となる今回の交渉会合は、予定されている最後の公式会合だった。それでも、主要対立点の公平な競争、漁業権に関する交渉に大きな進展はなく、合意に至らなかった。

これを受けて急きょ行われたフォンデアライエン委員長とジョンソン首相の協議で、合意を目指して今後も交渉を継続することを確認。次回の交渉は5日の週にロンドンで行われることになった。また、両者が定期的に話し合うことでも合意した。

フォンデアライエン委員長とジョンソン首相は共同声明で、「過去数週間で交渉が進展した」とした上で、公平な競争、漁業権のほか紛争解決の仕組みをめぐり「大きな溝が残っている」と指摘。それぞれの主席交渉官に「溝を埋めるため」集中協議に入るよう指示したことを明らかにした。

15、16日のEU首脳会議では、これまでの交渉の進展状況を検証することになっている。英国側は交渉期限を15日としているが、それまでに合意できない場合も首脳会議で合意が可能と判断されれば、月末まで期限が延びる可能性がある。