欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2020/10/12

EU情報

新型コロナでマドリードが非常事態宣言、パリではバーが再び営業禁止に

この記事の要約

欧州で新型コロナウイルス感染拡大が深刻化し、各国政府が相次いで対策を強化している。スペイン政府は9日、首都マドリードと周辺地域を対象に、15日間の非常事態を宣言した。通勤や通学、通院などを除き、対象地域への出入りが原則と […]

欧州で新型コロナウイルス感染拡大が深刻化し、各国政府が相次いで対策を強化している。スペイン政府は9日、首都マドリードと周辺地域を対象に、15日間の非常事態を宣言した。通勤や通学、通院などを除き、対象地域への出入りが原則として禁止される。

世界保健機関(WHO)によると、マドリード周辺では10月8日までの2週間に人口10万人当たりの感染者数が723人に上り、欧州でアンドラ公国に次ぐ高リスク地域となっている。

マドリード自治州は特に感染拡大が深刻なマドリードの45地区を対象に、9月21日から移動制限を導入した。中央政府は首都全域に対象を拡大するよう求めたが、州政府はこれを拒否。中央政府は今月2日からマドリードと周辺の9つの自治体を対象に、通勤・通学などを除いて自治体をまたぐ移動を制限する規制に踏み切ったが、州政府が不服を申し立て、マドリード州高裁は8日、移動制限を無効とする判決を下した。しかし、中央政府は感染拡大防止のため広域での移動制限が不可欠と判断し、強硬策に出た。

イジャ保健相は「マドリード市民の健康を守ると同時に、感染が他の地域に広がるのを防ぐため、直ちに必要な対策を講じなければならない」と強調し、マドリード自治州の対応を強く非難した。これに対し、州政府の報道官は「緊急事態宣言は完全に回避可能であり、自治州は最後まで他の選択肢を模索していた。中央政府が強硬策を取ったことは極めて遺憾だ」とコメントした。

一方、フランス政府は5日、パリ市を中心とする首都圏の新型コロナウイルス警戒レベルを「最高」に引き上げた。これを受けて首都圏では全てのバーが閉鎖されるなど、感染防止対策が強化された。このほか、イタリアで屋外でのマスク着用が義務付けられるなど、EU内で感染再拡大を受けて規制を強化する動きが広がっている。

同国では新型コロナ感染者が再び増え始めており、これまでに南部のマルセイユ、エクサンプロバンス市で警戒レベルが最高に引き上げられた。首都圏でも1日当たりの新規感染者が3,000人を超え、重篤化して集中治療を受ける人も急増して医療体制ひっ迫の懸念が強まっていることから、政府は同様の措置に踏み切った。

バーは6日から2週間にわたって閉鎖される。このほか、学生のパーティーの禁止、ショッピングモールや百貨店で営業できる店舗数の制限、大学の講義室で授業を受ける学生の数を定員の半数以下に制限する措置なども導入された。レストランは営業継続を認められるものの、感染防止策の徹底を求められる。

また、イタリア政府は7日、非常事態宣言を2021年1月末まで延長すると同時に、屋外でのマスク着用を義務付けると発表した。すでに同国では屋内でのマスク着用が義務化されており、今後はマスクを着けなくてもいいのは自宅だけとなる。違反者には最高1,000ユーロの罰金が科される。

屋外のスポーツ施設、6歳以下の子供は例外となる。家族以外の人と完全に隔離されていたと立証できる人も屋外での着用義務は免除される。また、レストラン、バーの店内での飲食時はマスクを外すことが認められる。

さらにドイツでは連邦政府と主要自治体が9日、過去7日間の感染者数が10万人当たり50人を超えた地域を対象に、感染防止策を強化することで合意した。都市封鎖の再導入で経済が再び深刻な打撃を受ける事態を回避するため、該当する「高リスク地域」では深夜営業の禁止やアルコール類の販売制限、マスク着用義務や集会に参加できる人数制限の厳格化など、既存の制限措置が強化される。

同国では8日、1日の新規感染者数が4月以来初めて4,000人を超えた。死者数や重症者数は第1波のピーク時と比べて低く抑えられているが、首都ベルリンをはじめとする人口密集地域を中心に、流行拡大が予想される冬に向けて警戒感が高まっている。

EU域内では新型コロナの感染が再拡大しており、前週にはスペイン、オランダ、ドイツなどが相次いで移動制限や営業時間の短縮といった対策を発表していた。ベルギー政府は6日、全土のバーの営業時間を午後11時までとすると発表。7日には首都ブリュッセルで全てのバー、カフェが8日から1カ月にわたり閉鎖されることが決まった。