欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/15

EU産業・貿易

中国が「外資たたき」批判に反論、VWとクライスラーにも罰金

この記事の要約

EUなどが中国で事業展開する多くの外国企業が独占禁止法違反の疑いで調査対象になっていることへの批判を強めている問題で、中国当局は11日、調査は「公平に行われている」と強調し、「外資を標的にしている」との欧米側の懸念を否定 […]

EUなどが中国で事業展開する多くの外国企業が独占禁止法違反の疑いで調査対象になっていることへの批判を強めている問題で、中国当局は11日、調査は「公平に行われている」と強調し、「外資を標的にしている」との欧米側の懸念を否定した。また、独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)と米クライスラーが独禁法に違反したと認定し、それぞれ約2億8,000万元(約49億円)、3,200万元(約5億4,000万円)の罰金を科すと発表した。

中国では2008年に独禁法が施行され、商務省、国家発展改革委員会(発改委)、国家工商行政管理総局(工商総局)がそれぞれ内容に応じて執行権限を持っている。3機関は北京で開いた合同記者会見で、これまでに調査対象になった企業のうち外国企業は10%程度にとどまり、外資を狙い撃ちしているとの批判は当たらないと反論した。

具体的には、主として価格操作を監視する発改委では、335件の調査のうち外国企業が関与している案件は33件で、市場独占を取り締まる工商総局では、外国企業に対する調査は全体の5%にとどまる。また商務省が実施した875件の合併審査のうち、計画を阻止したケースはわずかに2件だったという。

3機関はそのうえで、調査対象の企業には代理人を立てる権利を認めるなど「法的権利を尊重して」調査を行っており、常に透明性の確保に努めていると強調した。

中国当局はここ数カ月に、欧米や日本の大手自動車メーカーやIT企業など幅広い業種の外国企業に対し、相次いで独禁法違反の調査を開始している。8月には日本の自動車部品メーカー12社が価格を不当に操作していたとして、うち調査に協力した2社を除く10社に総額12億3,500万元の罰金支払いを命じた。今回罰金が科されたVWとクライスラーは、いずれも自動車本体や補修部品の価格を不正につり上げたとされる。当局はさらに独ダイムラーに対しても、近く処罰を発表するとしている。一方、IT分野では米クアルコムやマイクロソフトに対する調査が行われており、当局は近くクアルコムに対する処分を決定する見通しだ。

一連の動きを受け、現地に進出している企業の間では、中国当局が国内企業を保護するため、外資を独禁法調査の「標的」にして価格面などで譲歩を引き出そうとしているとの見方が広がっている。北京のEU商工会議所は先月、中国当局が国内で事業展開する外国企業に対し「脅しの戦術」を使って処分の受け入れを迫っていると指摘し、中国側の対応を批判する声明を発表。今月9日にはブトケ会頭が年次報告書に関するブリーフィングの席で、独禁法調査の基準があいまいなため進出企業の間で混乱が広がっていると説明。「公平性と透明性の欠如によって中国への投資機会が著しく損なわれている」と警告した。

一方、北京の米国商工会議所は8日に発表した報告書で、中国当局は独禁法を「自国の産業政策や国内企業にとって都合の良いように」解釈し適用していると指摘。外国企業に対する差別的な扱いは世界貿易機関(WTO)の協定に違反する可能性があるとの見解を表明している。