欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2014/9/15

EU産業・貿易

域内農家への緊急支援を中止、不正な補償請求の疑いで

この記事の要約

欧州委員会は10日、ロシアが実施しているEU産農産物の輸入禁止措置によって影響を受けている域内の農家に対する緊急支援を中止すると発表した。禁輸により農家が被った経済的損失に対する補償制度をめぐり、一部で過大な請求が見られ […]

欧州委員会は10日、ロシアが実施しているEU産農産物の輸入禁止措置によって影響を受けている域内の農家に対する緊急支援を中止すると発表した。禁輸により農家が被った経済的損失に対する補償制度をめぐり、一部で過大な請求が見られたためで、今後はより効果的な支援ができるよう制度を見直す。

ロシア政府は先月7日、欧米の制裁に対する対抗措置として、EU、米国、豪州、カナダ、ノルウェー産の青果や肉類、乳製品などの輸入を1年間禁輸すると発表した。これを受けてEUは、トマト、ブドウなど13品目の生鮮野菜、果物の生産者を対象に総額1億2,500万ユーロ規模の緊急支援を決定。市場から余剰な青果物の一部を取り除き無料で分配する一方で、生産者の損失を補償する内容で、11月末まで実施する予定だった。

欧州委によると、緊急支援に対しては大きな反響があったものの、一部の産品でロシアへの年間輸出量をはるかに上回る量が申告されるなど制度の悪用を狙ったと疑われる行為が見られたことから、支援の中止を決めた。AFP通信がEU関係者の話として伝えたところによると、例えばポーランドからは、EUの年間の対ロシア輸出の5倍近い量のキュウリに対する補償が請求されたという。欧州委のチオロシュ委員(農業・農村開発担当)は、「ロシアの禁輸措置によって突然重要な市場を失った生産者に対する支援に引き続き取り組む」としたうえで、より的を絞った効率的な支援策を近く発表すると述べた。

欧州復興開発銀行(EBRD)は9日発表した報告書の中で、ロシアの禁輸措置によって特に大きな影響を受ける国々としてバルト三国、ノルウェー、ポーランド、ハンガリーを挙げ、中でもロシア向けの食品輸出が国内総生産(GDP)の2.7%を占めるリトアニアが最も大きな打撃を受けるとの見方を示した。