WTOが年40億ドルの対米報復関税を承認、ボーイング補助金めぐり

世界貿易機関(WTO)は13日、米航空機大手ボーイングに対する米政府の補助金を巡り、EUが米国からの輸入品に最大で年40億ドルの報復関税を課すことを承認した。WTO紛争処理機関の正式な承認を経て、早ければ月内にも制裁発動が可能になる見通し。米国は欧州エアバスへの補助金を巡り、既にEUからの輸入品に報復関税を課しており、EUが対抗措置を実行に移せば欧米間の貿易摩擦がさらに先鋭化しそうだ。

EUと米国はエアバスとボーイングに対する補助金の違法性を巡り、2004年からWTOを舞台に争ってきた。EUは米政府や州政府などによるボーイングへの補助金が不当だと主張し、WTOに200億ドル相当の報復関税を認めるよう要請。欧州委員会は昨春に対象品目の暫定リストを公表しており、航空機、トラクター、ハンドバッグ、ワイン、水産加工品など幅広い製品が含まれている。

欧州委員会のドムブロフスキス上級副委員長(通商担当)は「われわれは交渉による解決を強く望んでいるが、そうならなければ自らの利益を守らざるを得ない」と強調。報復措置の連鎖を回避するため、米側が既に導入している追加関税を撤回すれば、対抗措置の実施見送りをEU加盟国に提案すると述べた。

一方、米通商代表部(USTR)は声明で「米側の補助金措置は既に撤回されており、EUが対抗措置を講じる正当な根拠がない」と指摘。そのうえで、発動済みの報復関税は維持しながら、交渉による紛争解決を目指す姿勢を示した。

エアバスとボーイングに対する補助金を巡り、WTO紛争処理小委員会(パネル)は両社に対する開発支援や優遇税制などが違法な補助金にあたるとの裁定を下し、双方に是正措置を命じた。しかし、EUと米国はともに相手がWTOの決定に従わず、引き続き補助金の支給を継続していると主張し、相互に再提訴。WTO上級委員会は18年5月、EUによるエアバスへの補助金継続は不当との最終判断を下したのに続き、19年3月には米国によるボーイングへの補助金継続も不当と認定。約15年にわたる紛争は両者の痛み分けとなった。

米国はWTO紛争処理機関がEUからの輸入品に年間75億ドル相当の追加関税を課すことを正式承認したことを受け、19年10月にEUからの輸入品に追加関税を課す報復措置を発動。一方、EU側は今年7月、WTOの裁定にも拘わらずエアバスがEU加盟国から引き続き不当な補助金を受けているとの批判をかわすため、同社がフランスとスペインから受けた低利融資の返済条件を見直すと表明している。

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