EUが対ロ制裁発動、ナワリヌイ氏毒殺未遂で

EUは15日、ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏の毒殺未遂事件に関わったとして、同日付でプーチン露大統領の側近を含む6人と政府系研究機関に資産凍結などの制裁を発動したと発表した。ロシア側は制裁に強く反発しており、対ロ関係が一段と悪化するのは避けられない情勢だ。

プーチン大統領の最大の政敵とされるナワリヌイ氏は8月、ロシア国内を移動中に体調不良を訴え、病院に救急搬送された。意識不明の重体となった同氏はドイツに移送され、独仏の研究機関や化学兵器禁止機関(OPCW)が血液などを分析した結果、旧ソ連の神経剤「ノビチョク」系の物質を検出したと発表した。これを受けてEUはロシア当局がナワリヌイ氏の暗殺に関与したと非難し、全容解明を要求。ロシア側から回答がないとして、12日の外相理事会で制裁発動で合意していた。

制裁の対象となったのは、ロシア連邦保安局(FSB)のボルトニコフ長官、エリツィン政権下で首相を務めたキリエンコ大統領府第一副長官、ヤリン大統領府国内政策局長、ポポフ国防次官ら6人と、ノビチョク製造に関わったとされる国立有機化学技術科学研究所。個人にはEU域内での資産凍結と渡航禁止、研究所には資産凍結が科される。

ナワリヌイ氏暗殺未遂疑惑を巡っては、英政府も同日、EUと同様の制裁を科すと発表した。対象の6人に対し、英国への渡航や英銀を介した金融取引などを禁止する。

EUはまた、リビア内戦に介入したとして、「プーチンのシェフ」とも呼ばれる実業家エフゲニー・プリゴジン氏に対する制裁も発表した。EUはリゴジン氏が民間軍事会社ワグネルを支援し、国連の対リビア武器禁輸措置に違反したと主張。EU域内への渡航禁止や資産凍結に加え、EU内の個人や企業による同氏への資金提供も禁止すると表明した。

今回の決定に対してロシア側は強く反発している。ペスコフ大統領報道官は「非友好的な措置」であり、EUは制裁発動により「わが国との関係を損なった」と非難。「状況を分析し、ロシアの利益に基づいて行動する」と述べ、EUに対し報復措置を取る可能性を示唆した。

一方、12日の外相理事会では、大統領選後の混乱が続くベラルーシに対する制裁についても協議し、新たにルカシェンコ大統領を制裁リストに加えることで合意した。EUは今月2日の首脳会議で、選挙結果の改ざんや反体制派の弾圧に関与した当局者ら約40人に対し、EU域内の資産凍結や渡航制限を科す方針で合意したが、ルカシェンコ氏は対象に含まれていなかった。EUのボレル外交安全保障上級代表によると、この間にベラルーシ側が何の対応も取らなかったため、同氏をリストに追加した。